コロナ禍、一歩立ち止まって思ったのは「『死なない』ではなくて、『死ねない』」

――自粛要請が解除されたりはしましたけど、エンタメ業界は先が見えない状況です。ただ、WACKは常に発信を続けていてまったく止まってる感じはないですよね。

渡辺:まあ、ライヴは止まっちゃいましたけど、自分たちのやりたいことは一応1年先まで計画を立てているので。そこを順当にやっていくとこんな感じにはなるかなって感じではあるんです。なので、今のところのここまでの施策というのは、ライヴができないから無観客ライヴをやるとか、モモコグミカンパニーの本も出したいとは思っていたので、この状況だからクラウドファンディングにしようとか、ちょっとすり替えながらやってきてる感じではありますね。でも逆にいうと今回、コロナのおかげって言うとなんですけど、すごく落ち着いてしっかりもう1回見直せる時間ができたというか。今まではどっちかというとウワ~って動いて失敗しても「もういいや! 」ってそのまま突っ走るみたいな感じがすごく多かったんですけど、一歩立ち止まってちゃんと考えてできるようになったなとは思います。

  • コロナをきっかけに、一歩立ち止まってちゃんと考えることができるようになったと語る渡辺さん

――そんな中で、6月15日から6月30日まで渋谷駅の看板掲出とその周辺で展開された「それでも、音楽は、死ねない。」キャンペーンには、どんな思いがあったのでしょう。

渡辺:じつは半年以上前から広告枠を押さえていたんですよ。キャッチコピーは全然違うものだったんですけど、コロナ禍の中で行うことになってしまったので、急遽コピーを変えて、臨機応変に対応したんです。でもコロナ禍っていうことで言うと、ライヴができなくなった2月末から3月末ぐらいにかけてですね。志村けんさんが亡くなられたこともあったりする中で、1回みんなが思考停止してしまったというか、諦めに似たモードになったのを僕もすごく感じていて。たぶん、最近はみんな一度立ち止まって考えて、「よし、もう1回」って盛り返してきてるんじゃないかなって思うんですけど。そんな中であのキャッチコピーが生まれてきたというか。改めて今、色んなことを考えながら、先日も加藤登紀子さんがライヴをやられたりとかして(6月28日(日)東京オーチャードホールでコンサートを行い1,000人を動員した)、よしまたライヴをもう一度やろうとかってなっているところで言うと、「死ねないよな」っていうのはすごく思ったところなので。

――「死なない」ではなくて、「死ねない」。

渡辺:「死ねない」っていう風に思いました。……でも本当に一瞬は僕も、「もしかしてこのまま転がって行って死ぬのかな」っていうのは、思ったりしたときもあったんですよ。音楽は食べ物みたいに生活する上で絶対必要なものではないんですけど、でもやっぱり「死ねないよな」っていうのは思いましたね。