『ウルトラセブン』の後番組『怪奇大作戦』(1968年)は"怪奇犯罪ドラマ"と銘打たれ、科学を悪用した怪奇な事件に挑む、科学捜査研究所(SRI)の活躍を描く物語となった。ウルトラマンやウルトラセブンのようなスーパーヒーローが登場しない『怪奇大作戦』では、特撮を駆使した科学犯罪の根底に人間の"悪意"や"情念"がうごめいており、それらがぶつかりあうことによって心に残るドラマを描こうという姿勢が貫かれた。上原氏は第1話「壁ぬけ男」、第3話「白い顔」(金城氏と共作)、第8話「光る通り魔」(市川氏と共作)、第12話「霧の童話」、第15話「24年目の復讐」、第16話「かまいたち」、第19話「こうもり男」と7本を手がけている。特に第15話は、戦後23年を迎えた当時に色濃く残る「戦争」の記憶をベースにした作品で、世界各地にまだ終戦を知らず任務を遂行し続けている旧日本軍兵士が存在したこともあって、異様な生々しさを感じさせている。
『怪奇大作戦』で"確かなテーマ性を含んだSFドラマ"の方向性をつかんだ上原氏は1969年、金城氏が円谷プロを離れて沖縄に戻ったのを契機に、東京でフリーのシナリオライターとしてやっていくことを決意する。『ウルトラセブン』『怪奇大作戦』で上原氏や市川氏を厳しく鍛えたTBSプロデューサー・橋本洋二氏との縁で、東映製作のスポーツ根性ドラマ『柔道一直線』(1969年)に参加することになった上原氏は、かつて『ウルトラマン』で実相寺昭雄監督と組んで数々の傑作・異色作を生み出した人気シナリオライター・佐々木守氏が超人的な集中力でこなす仕事ぶりを目の当たりにし、「佐々木先生と同じでは、自分はいつまで経っても"亜流"にすぎない。"俺は俺の生き方で行こう"と腹を決めました」と、この当時を振り返っている。『柔道一直線』で橋本氏、佐々木氏に鍛えられた上原氏は、全92話のうち半数近くとなる39話(共作8話)を手がけることで、一本立ちする自信がついたという。
『柔道一直線』で出会った東映プロデューサー・平山亨氏から『仮面ライダー』(1971年)のシナリオを伊上勝氏、市川森一氏と共に依頼された上原氏だったが、同時に円谷プロからも『帰ってきたウルトラマン』(1971年)のメインライターを頼まれた。1970年に円谷英二監督が死去し、長男の円谷一氏が二代目社長となった新生円谷プロからの依頼、しかも第1、2話を演出するのが東宝の『ゴジラ』シリーズなどで英二監督とタッグを組んでいた本多猪四郎監督ということもあって、上原氏は『仮面ライダー』ではなく『帰ってきたウルトラマン』を引き受けることにした。『ウルトラマン』の世界をすでに作り上げた金城哲夫氏とは違う方向性を求められた上原氏は、『柔道一直線』でつかんだ"極意"を活かして「人間ドラマ重視のウルトラマン」という方針を立てた。
怪獣攻撃隊MATの郷秀樹隊員はウルトラマンの力を持っているが、まず人間として出来ることを精一杯やった上で、最大のピンチを迎えたときだけウルトラマンに変身することができる。郷は遠く離れた場所でも怪獣の鳴き声を感知する超能力を備えているが、その突出した能力のために他のMAT隊員とのチームワークに亀裂が生じたことがあった。ウルトラマン自身も怪獣に圧倒されて、倒すことができず撤退を余儀なくされ、リターンマッチを挑んで勝利を収めたケースもあった。ユニークなデザイン、設定を持つ怪獣の魅力と、明朗快活でシンプル、それゆえ深みをも感じさせるストーリーの魅力がマッチした『ウルトラマン』との差別化もあり、「怪獣と戦う人びと」を中心とした熱い人間ドラマを打ち出した『帰ってきたウルトラマン』は、沈静化していたテレビの"怪獣"人気を盛り返し、「第2次怪獣ブーム」と呼ばれる社会現象をけん引する存在となった。
その後も野球をテーマにした根性ドラマ『ガッツジュン』(1971年/宣弘社)、かつての円谷プロから独立したスタッフが中心となって作った異色のSFドラマ『シルバー仮面』(1971年/宣弘社)、人気アクションコミックをドラマ化した『ワイルド7』(1972年/国際放映/上原氏はシナリオ執筆にあたって、オートバイライダーの感覚をつかむためバイクを購入して乗り回したという)、変身ヒーローのタブーに挑んだシリアス風味の濃い『鉄人タイガーセブン』(1973年/ピープロ)など、当時のゴールデンタイム(19:00~20:00)全般で放送されていた30分テレビドラマのあちこちで活躍を続けていた上原氏。1973年の『ドロロンえん魔くん』(東映)からはアニメ作品も手がけ、『ゲッターロボ』(1974年/東映)、『ゲッターロボG』(1975年)、『UFOロボ グレンダイザー』(1975年)など数々のロボットアニメをヒットに導いた。
東映のヒーロー作品では『ロボット刑事』(1973年)、『イナズマン』(1973年)、『イナズマンF(フラッシュ)』(1974年)といった石ノ森章太郎原作作品に参加。特撮ファンの間では特に『イナズマンF』の第12話「幻影都市デスパー・シティ」が話題に上ることが多い。冷酷な悪のデスパー軍団・ガイゼル総統が支配する実験都市デスパー・シティでは、住民はみなナンバーで呼ばれ外を歩き回る自由すら許されていない。命令を破ればサデスパー市長に即刻処刑されてしまう。イナズマン/渡五郎は相棒のインターポール捜査官・荒井誠の家族がデスパー・シティに捕われていることを知り、決死の潜入を図ろうとする。自由を奪われたシティ住民にとって、イナズマンこそが唯一で最大の希望="自由の戦士"なのだ。『ウルトラセブン』の「第四惑星の悪夢」でも描かれた「管理・密告社会の恐怖」というテーマがよりストレートな形で示されている。