最後に消費電力。いつもの様にSandra 2018のDhrystone/Whetstoneを行った結果(グラフ41)と3DMarkのFireStrikeを行った結果(グラフ42)である。なんせRyzen ThreadRipper 2970WX/2990WXはTDPで250Wだから、こう見るとCore i9-9900Kの実効消費電力が低く見えてしまう。
さて、ここからそれぞれの実効消費電力の平均値を取ったのがグラフ43である。なんかこう突出してCore i7-8700Kの消費電力が低く思えるが、それはともかく。ここから待機(Idle)時の平均消費電力との差を示したのがグラフ44となる。
とりあえず4ダイ構成のRyzen Threadripper 2970WX/2990WXが突出して大きいのは当然だが、例えばDhrystone/Whetstoneの場合はCPUだけでなくメモリなどもフルに動くから、274/276Wという差から見ると、TDPの250Wをきっちり守っているという印象がある。そしてCore i9-9900KはRyzen Threadripper 2920X/2950Xより10Wちょい低いだけ、というのはなかなか凄いことだとちょっと感心してしまう。
それはともかく、グラフ45・46はそれぞれ待機時の消費電力からの差を示したものだが、特にDhrystone/Whetstone(グラフ45)についてはこのあたりの傾向が良く分かる。もう1つ付け加えると、Ryzen Threadripper 2920Xの消費電力が、Ryzen Threadripper 1950Xと比較してもちょっと高めなのは、Pinnacle RidgeというかColfaxにコアが変わったせいであろう。
さて、このグラフ43について、Sandra 2018でのDhrystone/Whetstoneの値と合わせて効率を計算してみたのが表2と表3である。
CPU | Dhrystone (GIPS) |
消費電力差 (W) |
効率 (GIPS/W) |
---|---|---|---|
R7 2700X | 339.6 | 126.8 | 2.7 |
TR 1950X | 587.8 | 159.1 | 3.7 |
TR 2920X | 504.0 | 193.6 | 2.6 |
TR 2950X | 636.5 | 191.9 | 3.3 |
TR 2970WX | 884.6 | 274.0 | 3.2 |
TR 2990WX | 1120.0 | 276.7 | 4.0 |
i7-8700K | 163.9 | 86.9 | 1.9 |
i9-9900K | 250.5 | 178.0 | 1.4 |
CPU | Whetstone (GFLOPS) |
消費電力差 (W) |
効率 (GFLOPS/W) |
---|---|---|---|
R7 2700X | 205.4 | 118.0 | 1.7 |
TR 1950X | 367.7 | 163.7 | 2.2 |
TR 2920X | 309.2 | 181.0 | 1.7 |
TR 2950X | 377.0 | 171.2 | 2.2 |
TR 2970WX | 504.0 | 248.1 | 2.0 |
TR 2990WX | 676.8 | 233.3 | 2.9 |
i7-8700K | 300.9 | 65.1 | 4.6 |
i9-9900K | 459.0 | 135.3 | 3.4 |
大きく言えば、Ryzen系は整数演算(Dhrystone)で演算効率が良く、Core i7/i9は浮動小数点演算(Whetstone)で効率が良い。このWhetstoneはAVX512命令の実装によるところが大きいので納得できるし、逆にそれ以外ではRyzen系の方が効率が良いのは納得できる。
以上を踏まえた上でRyzen Threadripper 2920X/2970WXについて言えば、性能は有効コアの数に比例してそれなりに低いにも関わらず、消費電力という観点ではそれぞれRyzen Threadripper 2950X/2990WXと変わらないため、効率はやや落ち気味になっている。この観点で言えば、Ryzen Threadripper 2920X/2970WXはあまりお買い得ではない、ということになるだろう。