Cook氏は、AppleはHomePodやApple TVだけでホーム関連の戦略を組み立てているわけではないと語ったが、実際、他の分野についても取り組みを始めている。
Appleは民生用ワイヤレスルーター製品の草分け的存在だった「AirPort」(日本では「AirMac」)シリーズの製造を取りやめた。一時的な販売停止ではなく、ラインアップ自体が役割を終えたと考えられる。しかしWi-Fiネットワークに関する製品開発をやめたわけではなさそうだ。
Appleは2018年からApple Storeで、複数のルーターを連携させてより広いエリアで高い品質のワイヤレスネットワークを構築できるメッシュに対応したWi-Fiルーター「Linksys Velop」を販売し始めた 。
加えて、スマートホーム向けの低消費電力を実現する無線規格「Thread」のグループにAppleが参画したことが、2018年8月にVentureBeatによって伝えられた 。ThreadはIEEE802.15.4規格に準拠し、低消費電力、大規模ネットワーク構築などを目指した無線規格だ。ZigBeeやZ-Waveなどと同じ通信規格を用いることから、ソフトウェアアップデートのみで、既存の「Philips Hue」などのZigBeeを利用した製品をThreadに対応させられる。
AppleがすぐにThreadに関連するデバイスをリリースしたり、ルーターに再参入することを意味するわけではないが、ホーム戦略の中で、Bluetoothとともに、無線規格の策定に携わりながら新しい製品を投入するチャンスを伺っているとも思える。ここでも虎視眈々、というところだろうか。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura