Apple Music、そしてオーディオ機器に関連したAppleの取り組みについて考えてみると、iTunes、iPod以来、楽曲を販売するためのストアの開設、パッケージからノンパッケージ商品への移行とアーティストの収益の担保、ストリーミング化と、そのトレンドの変化の中で、最も良いソリューションを提供し続けてきた。ハードウェア、ソフトウェア、サービスを一体化して音楽体験を構築できる強みを誇示つつつ、より良い姿、あるべき姿へと導いているオピニオンリーダー的存在であると評価できよう。
一方、Appleが取り組むべき「音」に関するもう1つのジャンルがある。それは拡張現実だ。
AppleはiPhoneやiPadで動作するアプリに拡張現実機能を取り入れられる「ARKit」を用意し、「世界最大のARプラットホーム」であるとアピールしている。しかしAppleは、ディスプレイを通じた画像のARから取り組んでいる状態にとどまっている。
視覚にARがあるように、聴覚や触覚にもARがあってよいだろう。Boseは2018年3月のSXSWで、加速度センサーを備えたヘッドフォンによる聴覚のARを披露した。Appleは現在、ARグラスの開発に着手していると言われているが、AirPodsやその後継、上位モデルが、オーディオARに対応しても、面白いのではないだろうか。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura