MacBook Proに限った話ではなく、様々なデバイスは、一度薄さを獲得すると、わざわざ元の厚さには戻そうとはしないものだ。それはすなわち、後退を意味することでもあるからだ。そのため、キーボードという、Macを使う上で非常に重要なパーツの問題解決であっても、以前のようなキーの深さを実現するキーボードに戻すことはしないだろう。そしてAppleも、厚くする、という退化を許容しないはずだ。
では、Appleはバタフライキーボードについて、なんらかの解決策を見出せるのだろうか。個人的には2つの解決の方向性があると考えている。1つはより現実的なもの、もう1つは言ってみれば、アグレッシブなものだ。
1つ目の解決策は、キーボードの構造の変更だ。キーが浅くてホコリが入り込んで不具合を起こしやすいのであれば、キーの深さを増すか、ホコリが入り込めなくすれば良い。キーの深さを変更するのは本体の厚さに影響するため、採用しにくい解決法だと言える。だとすれば、埃が入らない構造を用意するしかない。
Appleの提出している特許文書に、そのヒントがある。「Ingress Prevention for Keyboard」と名付けられた2018年5月8日提出の特許文書では、キーボードのバタフライ構造とキートップの間に覆いのような構造体を挟み込むアイディアが複数盛り込まれている。メカニズム部分を覆ってしまうことで、液体や埃などの侵入を防げるとしており、また、覆われたキーボード部分を押し込むことで中の空気が圧縮されるため、それらを外に逃がす機構についても言及されている。
イメージとしては、iPad Pro向けのSmart Keyboardが近いだろう。Smart Keyboardは独立したキーがベース部分から飛び出しているが、そのキーや土台をすべて1枚のファブリックでカバーしている。そのため、Smart Keyboardでホコリの問題は一切生じないのだ。SmartKeyboardのような構造の上にキートップをはめ込むことで、厚みをさほど増すことなく件のキーボードの問題を解決することができそうだ。
もう1つのアグレッシブな方法とは、Touch Barを拡大させてしまうようなイメージと言うべきだろうか。
昨今WindowsのノートPCでは、トラックパッドにディスプレイを埋め込むモデルが登場している。これを、トラックパッドと言わず、キーボード全体に拡大させるバーチャルキーボードにしてしまう、というアイディアだ。そうすればキーボードの可動部分なくすことができ、更なる薄型化を実現し、またTouch Barのようなプログラマブルなインターフェイスをより広い領域で実現できるようになる。
進化のレベルは、こちらのほうが間違いなく高い。しかしながら、アプリの対応や、そもそもキーボードをディスプレイ化することによるコストの増大が避けられないといった別な問題が生じる可能性が大ではあるが。