細分化された項目で達成率を競う仕組み
冒頭にも掲げた3つの領域、セールス、マーケティング、アフターセールスの各部門において、各ディーラーは複数の項目で個別に年次目標を課せられ、その達成率で競う。
例えば、年間100台を売るという目標が課せられた場合、1年間で100台売れば100%の達成率となる。90台で終われば達成率は90%だ。小さなディーラーで、年間20台の販売が目標であったとしよう。その場合、20台を販売できれば同じく達成率は100%となる。こうして、ディーラー規模の大小を問わず、目標をいかに達成したかでセールス部門の順位が決まっていく。
では、マーケティングについてはどうか。例えば顧客情報(Customer Relationship Management)に基づき、新車を納入した客が新規か既存かによって、与えられる点数が違ってくるケースがある。なおかつ、単に客が新規か既存かの区別だけでなく、販売する車種が、新規客向けであるか既存客向けであるかといったように、その商品性と実際に売った客の属性の組み合わせにより、点数が違ってくることもある。このあたりの評価は、フェラーリの販売戦略と連動することになる。
アフターセールスでは、納車後に実施するフェラーリ独自の保守管理の件数や、部品販売の金額などによって点数が与えられる。
評価項目は他にもあるそうだが、以上のように、販売台数だけでなく、一見すると数値化が難しそうに思われる、マーケティングやアフターセールスの業務に関しても、仕事の成果を達成率で数値化し、成績を評価する。
徹底的な数値化はモータースポーツのDNA?
情緒的評価が排され、世界のディーラーが一目瞭然の数値によって判断されるので、公平さは保たれる。また、その年の勝者に対しても、皆が納得づくで賞賛することができる。それはあたかも、ルールの下で勝敗を競うスポーツのようである。この点についてフェラーリ・ジャパンは、そもそもフェラーリとはモータースポーツを発祥とするメーカーであり、その遺伝子に基づいた顕彰の仕組みだと説明する。
とはいえ、フェラーリ独創の仕組みがあったとしても、何十年もフェラーリの販売実績を持つ伝統あるディーラーではなく、新興ともいえるロッソ・スクーデリアが、なぜ世界一になることができたのか。