MacBook Airの役割が不明瞭となったのは、2015年に発売された12インチ「MacBook」の登場だ。MacBook Airでは実現しなかったRetinaディスプレイを備え、より小さく軽量化されたマシンに仕上がった。形状こそ、MacBook Airを受け継いだ先端に向けて鋭く尖ったデザインを採用しているが、1,299ドルからという価格は、MacBook Airから値上げされ、「高級感漂う演出」が施されていた。

  • 2010年に追加されたMacBook Air 11インチモデルは1000ドル以下の価格と、よりコンパクトなメインマシンとして、多くの人々の支持を集め、Mac入門機としてMacユーザー増加にも寄与した

Appleは2016年10月に、ノートブック型の上位機種「MacBook Pro」を刷新した。「Touch Bar」と呼ばれる新しいインターフェイスをキーボード上部に備え、専用チップ「T1」を搭載し、これのコントロールと「Touch ID」による指紋認証セキュリティを実現したモデルだ。このモデルの登場とともに、11インチMacBook Airの販売は終了し、13インチのみがかつての11インチモデルと同じ999ドルという価格で残された。

Appleは2016年3月に「9.7インチiPad Pro」を発表し、古くなったPCの買い替え需要を狙うというマーケティングの目標を明らかにした。また2017年6月には、10.5インチへとサイズを大きくし、11インチMacBook Airと同じような画面サイズを備え、より薄く軽快に持ち運ぶことができるデバイスとして、引き続き同じターゲットを目標に据えている。

PC市場からのユーザーの取り込みの役割を、価格競争力があるMacBook Airが担ってきたが、その役割をiPad Proへと引き継いだと考えられる。もちろんiPad Proは、Microfoftの「Surface Pro」と十分に対峙できるが、Googleの「Chromebook」と比べれば2〜3倍以上高い価格差があり、問題がないわけではない。

ただ、アプリの共通化などの点でAppleの主力事業であるiPhoneとの親和性がより高く、現在のAppleにとってはより良い選択肢となっている。