AppleはMacBook Airの「Air」というキーワードを大切にしてきた。現在ラインアップから姿を消したが、「iPad Air」「iPad Air 2」をリリースし、これまで以上にコンパクトで薄い製品の名称の一部に、「Air」という単語を与えていた。
MacBook Airにおける「Air」という言葉に向けられたコンセプトは、驚くほど薄型で軽量化されていることと、ワイヤレス主体での活用の2点だ。
初代はクラムシェル型のような湾曲したボディを持ちながら、ディスプレイのヒンジ部分から先端に向けてその厚みがしぼられていくデザインが採用されている。均一な厚みではないが、薄くできるところは最大限まで薄くした。
また、本体を正面においてみると、ボディの下側が縁に沿って厚みが絞られているため、テーブル面には陰が落ち、まるで薄い板が浮いているような錯覚を覚える。こうした演出も、Airの単語をまとっていた理由、と考えることができる。
ポート類が必要最小限(当時は必要最小限以下だと感じていた)に絞られたことで、外部との接続は無線通信が基本となった。ネットワークはワイヤレス経由となり、通信を利用する際の接続もBluetooth経由で行うことが前提になっていった。
もちろんケーブルを持ち歩かなくて済むため、慣れれば便利だったが、確実に線で結ぶことができる有線接続に慣れていると、どこか不安な部分もあった。そうした不安を人々から払拭し、ワイヤレスにポジティブになってもらうことも、Airのモデル名の役割だったかもしれない。
MacBook Airは現在も13インチモデルが販売されているが、iPad Air 2は2017年3月のラインアップ刷新でiPad(第5世代)と置き換えられた。ちなみにこのモデルは初代iPad Airと同じ厚さのデザインを採用している。このようにして、Appleのデバイスのメインストリームから、Airと名のつく製品は消えつつある。
かわって、Airには、ワイヤレスという意味合いが強調されるようになった。そもそも、「Air」のラインが確立される前に、「AirPort(日本では「AirMac」)」という製品名でワイヤレスネットワークステーションが販売されてきたという経緯もある。
「AirPods」はAppleのワイヤレスイヤホンとして、iPhoneからイヤホンジャックが取り去られた2016年に登場した。まだ発売されていないが、複数のデバイスを同時に充電することができるワイヤレス充電パッド「AirPower」にも、Airという称号が与えられている。