TYPE-Rでできること
センサーをつけるべき場所を探っていった結果、現在は、両モモ、両足の甲、そして、仙骨(骨盤の上)に計5つのセンサーを貼る形に落ち着いている。
足の甲のセンサーは踏み遅れの確認などに使い、モモのセンサーは体の動きの左右差の確認などに使われる。仙骨は、疲労とともに変化していく骨盤の角度を計測する。そして、ペダリング1回転内で、ペダル速度がスムーズではない箇所の大きさと位置を特定し、数値でスコアリングするDSSという指標も編み出した。
体の動きをセンシングすることで、個々人の癖を見つけ出し、パフォーマンスを上げる道筋を見つけることが可能になるのだ。
加地氏は「人の動きを数値化すれば、とても幸せな世界が待っている」とも話す。たとえば、腰の動きが少ない選手に腰を動かせといっても難しい。動かしているようでも、それがわずかな変化であれば、コーチも見落としてしまう。おそらく「動いていないぞ」といったアドバイスにしかならない。しかし、数値化することで、角度が1度でも動いていれば、自分が正しい方向に向かっているのか、そうでないのかわかる。細かい変化は人間の目には限界があるが、TYPE-Rならば、それが解決できる。
怪我を防止する
細かい動きが測定できることで、怪我の防止にも役立つのがTYPE-Rのすごさだ。
LEOMOには、トレーニングをすると腰痛が発生するという選手がいた。周囲からは、体の使い方に左右差がある、体幹が足りないのではないか、など様々な意見があった。そこで彼の動きをセンシングした。
注目したのは、ペダリング時の足の甲の角度の左右差だった。「左右で10度差があるという人は多くいますが、彼は20度違っていた。数値上は大きいですが、それでも意識的に見て、ようやくわかる程度の差です。その動きを吸収しようとすると、体をひねらければならなかったんです。動きを再現してみると、そりゃ、痛くなるよねというのがわかりました」。
体の使い方に左右差があることは、人間の目でも気づけたが、その原因までは誰も突き止められなかった。センシングしたからこそ、見えてきた事実である。
痛みの程度によっては、継続的なトレーニングはできなくなる。選手生命を脅かすリスクさえある。どんなスポーツでも、怪我は避けたいところ。防止効果が見込めるというだけでも期待値は高い。