センサーを装着すべき場所を探る

TYPE-Rは、心拍トレーニング、パワートレーニングに次ぐ、革新的なトレーニングツールになりえる。革新的なぶん、開発には苦労は多い。その反面、意外な事実もわかったりする。

プロトタイプ作成後、ある実験を行った。自転車では、ペダルを回す動きを時計に見立て、12時の位置から踏み込むのが効率的なペダリングだと言われるが、「12時から踏む」をセンシングしてみることにした。

テストライダーは宮澤崇史氏。宮澤氏はLEOMOがスポンサードするLEOMO Bellmare Racing Teamの監督兼コーチであり、かつては欧州を主戦場としてワールドチームにも所属していた選手である。そこに(宮澤氏ではない)コーチが立ち会う。踏み遅れは脚の動きで判断しているというコーチの言葉をもとに、いくつものセンサーを宮澤氏の脚に着けた。

宮澤氏がペダルを漕ぎ出す。しばらくして、ペダリングが乱れるように負荷をかけていく。その姿をコーチが見守る。負荷がかかり、"もう十分"という段階で宮澤氏がペダリングをやめる。コーチは「めちゃくちゃ、踏み遅れましたね」と伝える。

しかし、加地氏には踏み遅れが見えなかった。人間の目などそんなものかと思ったが、データを見ても誤差に過ぎなかった。この認識の差は何なのか。それを埋めたのは、ふと浮かんだ加地氏の疑問だった。本当に脚の動きで判断しているのか、である。

そこで、腰から上の動きを隠した動画をコーチに見せた。すると、途端に乱れたペダリングが判断できなくなってしまったのだという。「コーチは全身の動きを見ていたんですよ。腰から上の動きを認識して踏み込むタイミングを判断していたんです」。

ここからは、様々な選手を見てきた経験豊かなコーチでも、直観的に判断していることがわかる。経験にもとづき、目の前のペダリングを捉え、答えを導き出していたわけだ。

これを踏まえて、センサーを装着するのに、最適な場所を探る必要に迫れられた。全身いたるところにセンサーを取り付け、コーチの意見を参考にしながら、データを拾い、一から検証していった。