Appleは年次開発者会議WWDC 2017を控えている。筆者はこのイベントの中で、AI処理のチップや、これを活用するAPIについて言及があることを期待している。ハードウェアとそれを活用するソフトウェアプラットホームによって、アプリ開発者がどんな創造力を発揮するのか。これはiPhoneが発展してきた進化の手法そのものだからだ。
ここまで見てきた通り、AppleもAIチップを活用したARに関する提案を行うことになるはずだ。その分野は、コミュニケーションとアシスタントの2つの領域になると予測している。
コミュニケーションについては、例えばFacebookがやるように、ビデオチャット中にリアルタイムにエフェクトをかける機能を取り込むだろう。iMessageにLINEやFacebookメッセンジャーのような「ステッカー」を取り入れたことからも、想像に難くない取り組みと言える。ただ、それだけだと凄みに欠ける。できることなら、Pokemon GOのように、自分がいる空間に相手がいるような感覚でFaceTimeが楽しめるような演出は実現してほしいものだ。
またアシスタントについては、iPhoneの今後の価値を決める本命になると思う。現在Siriは、音声アシスタントの仕事だけでなく、我々ユーザーがどんな時間・場所で、どんなアプリを使っているか、という行動パターンを蓄積している。検索画面やウィジェットに配置されている「Siriの検索候補(App)」は、状況に応じた良く使うアプリをリストアップしてくれる、動的なアプリランチャーとして機能する。ARほど派手さはないかもしれないが、日々iPhoneを使う中で、アプリをホーム画面から探す手間は非常に軽減されていることを実感できる機能だ。AI活用は、こうしたちょっとした、しかし、1日の中で何度も遭遇する手間をなくすことによる「心地よさ」の醸成にも、寄与することになる。