2017年は、シリコンバレーのプラットフォーマーにおける「拡張現実」(AR)がトレンドとなり、盛り上がりを見せている。FacebookはカメラをARの第一のインターフェイスだとアピールし、Googleは同社のGoogleアシスタントに「Google Lens」を組み込み、より実用的なAR活用を提示した。

FacebookもARに本腰を入れる

Facebook、Googleともに、カメラをかざしてリアルタイムになんらかの情報や物体などが表示される体験を「スマートフォンでのAR」として採用している。これは、本連載でも触れたが、iPhoneで初めて登場したARアプリ「セカイカメラ」で実現していた活用方法と同じだ。

AppleはTim Cook氏も、「仮想現実(VR)よりもAR」への関心の方が高いと繰り返してきた。AI専用チップは、前述の通り、リアルタイムに様々な情報を解析してもバッテリー消費に影響しないとなれば、ARの実装に非常に有利な環境を生み出すことができるようになる。

Facebookは、AR活用について、「情報表示」「デジタルオブジェクト」「装飾」の3つを挙げ、現実世界にオブジェクトを配置するゲームや、ビデオチャットやライブ配信中でも人の顔にお面を付けるエフェクトをかけられる、といった例を挙げた。

またGoogleは、写真から不用なオブジェクトを取り除くこと、カメラを向けた対象物の名前の照会、Wi-FiのIDとパスワードを認識して端末に自動設定、店舗にカメラを向けてメニューやレビューを検索という例を見せた。これらはいずれも、ソフトウェア的な処理によって実現していることで、既存のスマートフォンで動作するのを念頭に置いている。そのため、AppleがAIチップを搭載しなくても、具体化できる世界、というわけだ。そうした中で、AppleがAI専用チップを搭載することによって、ARの新しい体験を作り出せるかどうか、という点にも注目すべきだろう。前述の事例の処理をバッテリー消費が少なく円滑に行えることはもちろんだが、それ以外の体験を作り出すならどうすれば良いだろうか。