AI専用のチップを搭載して、その結果がバッテリー消費量の削減だけではつまらない、と思うのは筆者だけだろうか。もっと他のメリットももたらされることに期待したくなる。

まず、バッテリーの問題と関連して考えられるのは、機械学習や人工知能の処理が、より日常的に、あるいはリアルタイムに行われるようになるのではないか、ということだ。

例えば写真の「メモリー」機能は、写真を撮ったそばから分類されていくわけではなく、例えば次の日の朝や、週明けなど、なんらかの期間が終わってから、写真がまとめられていく。「記憶」という名前の機能であることから、それで十分役立っているように思うが、こうした処理を写真を撮った直後から行っていくと何が起きるだろうか。

iOS 10から「写真」アプリに搭載された「メモリー」機能

例えば、iPhoneが自動的に、一連の写真を比較して「良く撮れている」と判断したカットを抽出してくれたら、それらを束ねてすぐに周囲の人にシェアすることができるだろう。あるいは撮ったそばから顔認証をかけて、それらに写っている人に自動的にAirDropで共有してくれても面白い。

人工知能や機械学習は、人がやること、やるであろう事を先回りして用意してくれたり、裏で済ませてくれたりすると、便利さを感じられる。また、新しい価値が作り出されたとき、そのメリットを存分に感じることができるのだ。

テクノロジーとライフスタイルのことを深く考えてきたAppleのこと。テクノロジーがどのように価値を帯び、受け入れられるかを考えているはずだ。そのため、ただ「バッテリー消費が減りました」とアピールするだけに留まらない、AI専用チップを生かしたメリットを打ち出してくるのではないだろうか。