上堀内:『アラン英雄伝』は、まだテレビ本編でアランの運命がどうなっていくか、はっきりわからないタイミングで撮っていましたから、磯村くんも大変だったね。
磯村:どう演じればいいかわからず、過酷だったこともありました。第三章で、フミ婆の絵を屋台から見つけるっていう、あのシーンなんて特に。撮影期間も非常に短い中で、もがきながらやった思い出があります。
高橋:磯村くんは「このとき、アランはどこまで感情を出せばいいんでしょうか」とか僕たちに訊いていたからね。
上堀内:とにかく、やってみるしかないという感覚でした。それでも、磯村くんの演技はすばらしかったですよ。フミ婆の絵を見つけて、アランが涙をこぼすシーン、あのときの空は「合成じゃないか?」って思えるくらい赤くて暗い、きれいな夕焼けでした。それだけ、本当に日が暮れるギリギリまで粘っていたんですけれど。時間のないところで、「磯村くん泣けるかな」と思っていましたが、一発でいい涙をこぼしてくれた。本編で泣いたとき(第23話)よりも先にこっちを撮ったんだよね。
磯村:お芝居の中で涙を流したのは『アラン英雄伝』の第三章が初めてだったんです。あのときは、夕陽がどんどん沈んでいくのでスタッフさんのプレッシャーがあり、ピリピリした緊迫感がありましたね。
コミカルシーンの思い出
上堀内:第一章では、初期エピソードでアランと行動を共にしていた西園寺役の森下(能幸)さんにも出ていただき、アランと西園寺のテレビ本編ではうかがえない関係性を見せていこうとしました。
高橋:西園寺には、小学館の雑誌『てれびくん』の全プレ(全員プレゼント)DVD『真相! 英雄眼魂のひみつ!』にも出てもらっています。とてもいいキャラクターだったんですけれど、大人の事情がありまして、テレビではわりと早々にモノリスへと吸い込まれてしまいました……。
磯村:西園寺のアタッシュケースを開けると、たこ焼きが入っているという演出は意表を突かれましたね。
上堀内:あれはね、西園寺っていつもアタッシュケースを持ってるな~と思って、あの中にたこ焼きが入ってたら面白いかなと、単純に思いついた(笑)。あと、ジャベルとアランが並んでブランコに乗ってたら楽しそうかな~ってのも。
高橋:西園寺が、滑り台から滑りながら現れるシーンもよかった。
上堀内:後ろに、ふつうに子どもたちがいてね。
磯村:すごいカメラ目線でしたね(笑)。
上堀内:あれは、その場にいた子たちなんです。「君たち映ってもいい?」って確認を取りました。
磯村:あのシーン、面白かったですよね。ああいったシーンで、すでにアランはたこ焼きを"丸くて尊いもの"として、強い興味を持っていたんですね。
上堀内:アランがジャベルにたこ焼きのことを自慢気に説明するシーンも面白かった。アラン自身も知ったばかりなのね(笑)。ああいうアランの人間っぽさがときどき出てくるところが本当によかったですね。
磯村:ジャベルと並んでブランコを漕ぐシーンでは、本番で笑いそうになったんですよ。リハーサルでは僕とジャベルのブランコが交互に動いていたんですけど、本番だと、2人のブランコの動きが揃ってきて、それがおかしくて(笑)。懸命に我慢していたんです。
上堀内:俺はそのとき、真剣な顔でモニター観ていたんですから!
高橋:お前も笑いながらやっとったやんけ!
上堀内:そうです、楽しそうにしていました(笑)!