石井氏の言葉で印象的だったのは、「デジタルネイティブを疑え」というフレーズだった。
石井 確かに現在のこどもたちはテクノロジーやインターネット、つまりデジタルに囲まれて生活しています。だからデジタルネイティブなのか?ということです。3年生の生徒と授業をしていると、確かに放っておいてもiPadを勝手に使うことができるようになっています。しかし目的を持った使い方ができるようにはならない。使い方が雑だ、という印象を覚えます。ゲームやインターネット、YouTubeしかやっていなくて、情報を消費することしかできない、という意味です。何を知るべきか、体験と知識を結びつけること、情報の消費者と作り手の立場など。使い方の授業を省略できれば、こうしたより本質的な部分に時間を割くことができるようになるのです。
iPadやMacを使う中で、テクノロジーの向き不向きを理解したり、自分で手段を選べるようになることも、目標だという。iPadの教材よりも、図書館の本の方が読みやすい、という生徒がいても良いし、前述のようにビデオではなくスライドとスピーチで発表したい、という生徒がいても良いのだ。
今後、さらに低学年から自分のiPadを持つようになっていく中で、生徒たちが本来のデジタルネイティブになるにはどうしたらよいか。石井氏のチャレンジは、続いていく。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura