さて、Lightningか、USB-Cかという問題を考えて来たが、将来的には「どちらも採用しないiPhone」がやってくることは想像に容易い。iPhone 7ではヘッドホン端子を廃止している。次のiPhoneシリーズではワイヤレス充電をサポートする可能性が高くなっており、これが急速充電に対応していくことで、充電ポートとしてのLightningコネクタの役割も必要なくなるからだ。

つまり、完全ワイヤレスのiPhoneは、近い将来実現するだろう、ということになる。

現状、CarPlayやマイクなどの接続はLightningに頼っているが、CarPlayもワイヤレス対応を果たしているし、マイクについても、無線で高音質な電送を行う仕組みは実現はずだ。

その一方で、ケーブルを差し込んでいるという安心感を、ワイヤレスでいかに作り出すか、というユーザー体験の工夫は必要かもしれない。ワイヤレス充電をAndroidデバイスで使ってみると、確かにただ台に置くだけという手軽さがある一方で、充電が始まったか確認しないと不安もあるからだ。

加えて、Lightningポートを廃止し完全ワイヤレス化をするなら、外出先での充電もワイヤレス化されなければならないだろう。例えばモバイルバッテリーがワイヤレス充電機能を備えて、iPhoneと重ねておくことで充電されるようになるなら、ポケットやカバンの中で、バッテリー本体とiPhoneがぴったりと重なった状態を保持できるケースも必要となってくる。

もちろん完全ワイヤレス化時代の到来には期待したいが、それには、解決すべき問題がたくさんあることも分かってくる。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura