結果として、S&Wの買収は、それだけで6253億円を占める大規模な減損を発生させ、しかも、今後は、S&Wが得意とする土木建築事業を行わないという決断をした。まさに、東芝にとっては、「毒饅頭」以外のなにものでもなかったといえる。

原発事業は縮小へ

東芝の綱川社長は、1月27日の会見で、すでに原子力事業を「注力事業」から外す姿勢を明らかにしている。

とくに、ウェスチングハウスを中心とした海外原子力事業については、「パートナーを見つけて持分を下げるという方法で検討している」とし、「現在87%の出資比率を50%以下にすることもありうる」とする。また、東芝は英国での原子力プロジェクトのNuGenのプロジェクトオーナーであるNuGenerationに60%を出資しているが、これについても持分売却を進める姿勢を示している。

だが、2月17日には、ウェスチングハウスに3%を出資しているIHIが、出資時に結んでいた東芝に対する株式買い取りを請求できるプットオプション契約の権利を行使。東芝は、この株式を189億円で買い取ることになり、さらに東芝の経営を圧迫することになる。

これにより、東芝の出資比率は90%になり、ウェスチングハウスの出資比率の引き下げを検討している東芝にとっては逆風ともいえる事態。株主資本および純資産において、一定程度の減少が生じる見込みだという。

ウェスチングハウスには、カザフスタン共和国の国営企業であるカザトムプロムが10%を出資しており、2017年10月1日から、プットオプションの行使が可能となる。IHIの契約も、同じく10月1日からの行使となっていたが、一定の条件を満たした場合には、早期に行使可能となっており、それを行使したものだという。今後、カザトムプロムがどんな動きをするのかも注目される。

東芝は、福島第一原発の処理もあり、「社会的責任を継続して果たしていく」(綱川社長)というが、もはや東芝が原子力事業を担うだけの体力が残されていないとの指摘もある。だが、その一方で、原子力事業の最適な売却先が現れるのかどうかも不確かだ。

東芝は原子力事業にどんな決着をつけるのだろうか。