Apple Payが日本に導入されるにあたり、諸外国と圧倒的に異なる環境である理由は、前述の2つ目のハードルがない点だ。
日本では、非接触ICカードで鉄道やバスに乗り、コンビニで買い物をするのが当たり前の風景としてあった。コインロッカーもいまやICカードで利用するようになったし、中には社員証を兼ねている企業もある。このように、そもそも非接触ICカードでの決済が生活に入り込んでいる日本においては、そのインフラに乗ることができ、既存のカードを置き換えることができれば、米国で苦戦している利用可能店舗の拡大を気にしなくて良くなる。そこでAppleは、非接触IC決済に関して、日本固有のインフラを生かす道を選んだ。
店頭では既にリーダーが普及しているFeliCaを、iPhone 7/7 PlusとApple Watch Series 2に搭載することで、サービス提供初日から日本中で利用できる状況を実現したのである。アプリやブラウザ内での決済は米国と同様の仕組みを使うため、iPhone 6以降、過去にリリースされたiPhoneからでも利用できる。そう考えると、Apple Payが、あるいはAppleが、インフラへの対応に際して、意外にも柔軟な対応を取っていることがうかがえる。