MSI版新型SLIブリッジをメインストリーム環境でチェック

ではここからは、MSIのSLI HBブリッジを用い、2枚調達できたGEFORCE GTX 1070 GAMING X 8Gを用いた性能検証を行いたい。このSLI HBアダプタは、9月中旬の販売開始を予定している。すでにシンプルなSLI HBアダプタは発売済みだが、グラフィックスカード側とデザインを統一したいという方には朗報だろう。

初出時、SLI HBアダプタの発売時期について「9月第2週」としていましたが、9月中旬に訂正します

なお、価格は4,000~5,000円の予定で、#1-#4スロットにグラフィックスカードを挿す際のものと、#1-#5スロットにグラフィックスカードを挿す際のものの2タイプが用意される見込みだ。

MSIのSLI HBアダプタ。金属カバー付きで、表面にはお馴染みのドラゴンエンブレムがLEDイルミネーション機能付きで搭載されている

さて、GeForce GTX 10シリーズで導入された新しいSLIについて説明しておこう。GeForce GTX 10シリーズから、SLIはGeForce GTX 1070以上のGPUに限られた機能となった。一応、DirectX 12でサポートされた「EMA」を利用すればこの限りではないと考えられるが、EMAはゲームタイトル側でサポートする必要があるようだ。この点、SLIに対応するGeForce GTX 1070以上のGPUのほうが、安心してマルチGPUを組めるだろう。

同時にアダプタに関しても、「SLI HB」アダプタという、旧来のSLIアダプタの発展形が採用された。SLI HBでは、デュアルリンクのサポートが大きなポイントだ。従来は1本のアダプタで2枚のグラフィックスカードをつないでいたが、これが2本になる格好だ。合わせて、SLIアダプタの動作クロックが従来の400MHzから650MHzに引き上げられている。

ただし、ポイントとして、従来のSLIアダプタでも2本接続することでデュアルリンクモードが利用でき、動作クロックに関しても「(アダプタの品質がよければ)650MHz駆動することもある」とされている。では、GeForce GTX 1070のSLIパフォーマンスと、SLI HBアダプタの効果を試すべく検証してみよう。

「SLI HB」アダプタの装着例。ケースに収めた際の見た目で言えばこちらの方が断然良い

旧SLIアダプタの装着例。こちらはフレキシブルな分、拡張スロットの間隔に対してある程度柔軟に対応できる

ここからの検証について、先にいくつか注意をしておこう。今回の検証環境はIntel Z170チップセット搭載マザーボードで行っている。そのため、2枚のグラフィックスカードの帯域は、x8+x8レーンとなる。この点、LGA2011v3プラットフォームのx16+x16レーンとは異なるパフォーマンスの可能性がある。その点、あくまでメインストリームプラットフォームでのSLIパフォーマンスの目安として捉えていただきたい。

続いて、SLIに関しては、同じ型番のグラフィックスカード2枚が推奨される。つまり、GEFORCE GTX 1070 GAMING X 8Gの場合は、もう1枚GEFORCE GTX 1070 GAMING X 8Gを用意することになる。ただし、メーカー保証範囲外として、GEFORCE GTX 1070 GAMING X 8GとGEFORCE GTX 1070 GAMING X 8Gの組み合わせでも問題なく動作していた。

試しにGPU-Zを2つ起動し、3DMarkのFire Strike実行中の各GPUクロックを見てみたが、2つのGPUクロックには若干違いが出ているようで、最大クロックも異なった。また、当然ながらGeForce GTX 1080と1070のSLIは不可だった。

初出時、SLI動作の推奨をGamingモードとしておりましたが、こちら訂正をします。とくに推奨はなく、Gamingモード、OCモードともに動作に問題はありません。そのうえで、今回はGamingモードにおける検証結果を掲載いたします。

ではお待たせして申し訳ないが、実際の検証結果を紹介しよう。

まず3DMark。シングルGPU時とSLI時とでは、1.5~1.8倍のパフォーマンス差が現れた。一方で、SLI HBアダプタ、旧SLIアダプタのデュアルリンク、シングルリンク間ではパフォーマンスにそこまで差がないように見える。

Rise Of The Tomb Raiderの画質を最高画質以上に引き上げた場合の3,840×2,160ドット時で、旧SLIアダプタのシングルリンク時の最小フレームレートがやや低い値となったが、もうひとつこれも高負荷のGrand Theft Auto Vを最高画質とした場合で確認したところ、こちらはそうした傾向が見られなかった。ベンチマーク時のブレか、あるいはタイトル毎のクセであると考えられる。

SLI HBが旧SLIアダプタのシングルリンク時と変わらなかった点をもう少し考察してみよう。こうした結果となった可能性として挙げられるのは、メインストリーム向けプラットフォームのx8+x8レーンというPCI Expressバス側の帯域がボトルネックとなっているか、あるいは今回用いた旧SLIアダプタが650MHz駆動しているかだ。

ただし、前者はLGA2011v3プラットフォームを用意しなければ検証できず、後者は現状、確かめる術がない。いちおう、450MHz駆動時ではGeForce Control Panelから警告が発せられるとのレポートがあるが、今回の検証でこれを目にすることはなかった。

このように、今回のメインストリーム向けプラットフォームでは、SLI HBアダプタと旧SLIブリッジ、そしてそれをシングルリンクで運用した際でも違いが出なかったわけだが、ではLGA2011v3プラットフォームの、x16+x16レーンによるSLIでSLI HBアダプタの効果が出るのか。これは筆者も機会があれば試してみたいところだ。ほかにも、かなり古い時代のSLIブリッジならば400MHz駆動すると思われるので、これをお持ちの方は是非SLI HBアダプタとの比較を試してみていただきたい。