3つのモードのパフォーマンスの違いをチェック
ここからはベンチマークを用いて製品の検証を行っていきたい。まずは検証環境から説明する。今回の検証システムはメインストリームプラットフォーム(Intel Z170搭載MSI Z170A XPOWER GAMING TITANIUM EDITION)をベースとしている。具体的には、CPUにCore i7-6700K、メモリはDDR4-2133(Panram Q4U2400PSN-8G)を8GB、システムSSDにCrucial BX200、データSSDにOCZ Trion 150、OSをWindows 10 Pro 64bitとした構成だ。
わずかなクロック差を検証していくため、テストをそれぞれ3回計測し、その平均を算出する形で進めた。ただし、スコアのブレ幅によっては、より高クロックであるはずの製品が、低クロックのモデルよりも悪いスコアとなることはある。複数回計測することで、おおよその傾向はつかめるので、それをテキストベースで補っていきたい。
1つ目の検証は、3つのモードのパフォーマンスの違いにフォーカスしたい。用いたのは、GEFORCE GTX 1080 GAMING Z 8GとGEFORCE GTX 1070 GAMING Z 8Gだが、GEFORCE GTX 1080 GAMING Z 8Gを中心に見ていこう。
3DMarkでは、比較的明確な差が生まれた。Silentモードを100%として各モードの比率を算出すると、Gamingモードでは2~6%の差、OCモードでは3~8%の差となった。一方で、OCモードとGamingモードとの間にはそこまで大きな差はなく、Silentモード比で1~2%といったところだ。ただし、OCモードがより高いスコアとなる傾向は出ている。
実際のゲームパフォーマンスをRise Of The Tomb Raiderで比較してみると、こちらもSilentモードからGamingモードに引き上げた際に、確実なフレームレート向上が見られる。ただし、GamingモードとOCモードとの差は1フレーム未満で、その差を体感できるかと言うと難しい。それでも、OCモードのほうが高いフレームレートを出す傾向はあった。その点でOCモードに設定しておくことにメリットはある。
消費電力については、アイドル時で見ると3つのモードで大きな差はない。一方、高負荷時はSilentモードからGamingモードへと引き上げた段階で、GEFORCE GTX 1080 GAMING Z 8Gに30W近い上昇が見られた。また、GEFORCE GTX 1070 GAMING Z 8Gは確実に上昇するもののそれほど大きなものとはならなかった。
これはGPUの個体差の影響がでているものと考えられる。現状、聞こえてくる限りでは、GP104チップにはまだ大きなバラつきがあるようだ。消費電力についても、そのバラつきが表面化してしまっている可能性がある。GEFORCE GTX 1070 GAMING Z 8G側がよいタマに当たったということではないだろうか。
テスト結果からみると、Silentモードのメリットは、静音性というよりは省電力という点にあるように思われる。GeForce GTX 1080/1070はかなりのパフォーマンスがあるので、一部の重量級タイトル、あるいは4Kディスプレイを使っているようなユーザーを除けば、その性能を持て余すこともあるだろう。軽量タイトルで楽しむ際には、Silentモードに落としたうえで、V-SYNC等を利用し、消費電力を抑えるのがよいだろう。
GEFORCE GTX 1070 GAMING Z 8Gの各モードのパフォーマンス比較も行ったが、基本的にはGEFORCE GTX 1080 GAMING Z 8Gと同様の傾向なので、グラフのみ掲載する。
GPU-Zから見た各モードの動作とTwin Frozr VIの性能
さて、GEFORCE GTX 1080 GAMING Z 8Gのみとなるが、GPU-Zのログから、各モードの動作を確認してみた。
まずGPUクロックは確かに各モードによる違いが出た。それぞれ最大クロックで見ると、OCモードが2050MHz、Gamingモードが2012MHz、Silentモードが1873MHzといった具合だ。これはスペックどおりだ。
メモリクロックも、最大値で見るとOCモードとGamingモードは1263.6MHz(10108.8MHz)、Silentモードは1251.5MHz(10012MHz)となった。こちらもスペックを確認した格好だ。
GPU温度は各モード大きな差はなく、OCモードのみ65度、ほかは64度だった。現在のグラフィックスカードでは、積極的に冷やそうというよりは、必要十分な温度まで下げ、できるだけファンの回転数を引き下げる。あるいはMSIのGAMINGシリーズグラフィックスカードのようにZero Frozrでファンを停止して静音性を高めようとする。そのため、60度台であってもこれは高いというわけではなく、GPUのしきい値である80度に対して余裕があれば基本的には問題ない。
以前のように、低負荷時やアイドル時でもファンを回し、30度前後まで冷えるということはない。なお、こうした静音性向けの機能は、ケース内温度が高い場合はあまり有効に機能しないので、エアフローはしっかりと考える必要がある。
VDDCの値は、最大値で見るとどれも1.062Vで変わらない。
消費電力の目安になるPower Consumptionの値は、積算でグラフ化してみた。OCモードとGamingモードには大きな差はない。一方でSilentモードはぐっと抑えられているように見える。
ファン回転数は、最大値で見るとOCモードが884rpm、Gamingモードが873rpm、Silentモードが826rpmとなった。クロックが低いモードであるほど、最大回転数も抑えられている。また、いずれも1,000rpm以下なので、高負荷時でも十分に静かだ。さすがにFurMarkのような高負荷なベンチマークではもう少し回転数が上がるものの、爆音にはほど遠い。ケース側でしっかり対策しておけば、長時間のゲームプレイも快適だ。
Silentモードではほかとくらべ回転数が抑えられており、理論上より静かであるはず。ただし、実際に人間の耳で比べるとモードの違いはよく分からないレベルだ。
このように、TwinFrozr VIの冷却・静音性能は、GeForce GTX 1080でもまったく問題ないレベルで仕上がっている。それでもトリプルファン製品が増えているのは、1基あたりのファン回転数を抑制したり、あるいはさらに高いクロックでのオーバークロックを見据えたり、あるいはハイエンドゆえインパクトを求めるといった目的であると考えられる。
静音性に関しては、シングルファン製品に対してデュアルファン製品が圧倒的に静かであるわけだが、さらに増やすとなると、回転数減少による1基あたりの動作音抑制と、全体としての動作音の増加のバランスが重要となってくる。もちろん用いるファンの特性によっても変わる。最適解はメーカー、製品によってぞれぞれであるわけだ。さらにいえば、コストも関わってくる。