AppleがiPad Proで、基本的なコンピューティング環境をモバイルデバイスへ移行させようとしていると指摘したが、Appleのラインアップにおいて、MacBookシリーズとiPadシリーズが決定的に異なる点は、単体でモバイル通信を行えるかどうかだ。
Windows搭載ノートPCやSurface ProにはSIMカードスロットを搭載するモデルはあり、MacBookシリーズへのSIM搭載を望む声も聞かれるが、Appleが果たしてそれを実現させるかどうか。iPad Proの登場で、若干遠のいたと考えても良いかもしれない。
9.7インチiPad Proでは、モバイル通信についても2つの進化がある。
1つはデザイン的な進化だ。アンテナ部分を覆っていたプラスティックのカバーは、iPadのセルラーモデルであることの証であったが、せっかく金属の1枚の板のような背面に、象嵌というにはデザイン性に欠けていた。9.7インチiPad Proでは、iPhone 6シリーズのDラインのようなスリットに変更された 。 2つ目は、Apple SIMの内蔵だ。これまで通りSIMスロットは搭載されているが、これとは別に、Apple SIMが内蔵された。もしセルラーモデルになんらかのデータ通信SIMを差し込めば、内蔵と含めて2枚のSIMが挿さっていることになり、「設定」「モバイルデータ通信」から切り替えることができるようになった。
Apple SIMは、例えば旅行や出張をする際、行った先のケータイショップでSIMを買い求めなくても、ローミングより有利な条件の通信を利用することができるようになる仕組みを提供してくれる、いわば「玉虫色のSIM」だ。米国の場合、AT&T、T-Mobile、Sprint、SkyGigが提供するプリペイド、ポストペイのサービスを選べる仕組みだ。
残念ながら、なんらかのSIMカードを挿しこんでiPad Proをアクティベートしなければ内蔵Apple SIMを有効にできなかったため、内蔵Apple SIMだけを利用するわけにはいかなかった。
それでも「臨機応変に世界中どこででもモバイル通信できるパワフルなメインマシン」という姿は、iPad Proを仕事の道具として活用する際に、一つのセールスポイントになるだろう。