Appleは3月21日に開催したメディアイベントで、iPhone SEとともに、9.7インチiPad Proを発表し、3月31日から販売を開始した。筆者は早速9.7インチiPad Proを入手。1週間ほど試用してみた。

9.7インチiPad Pro

この試用を通じて筆者は、現在どうであるかは別にして、AppleはどうやらiPadを「Appleが提供するコンピューティングの基本」に据えようとしているのではないか、と考えるようになった。

もちろんそのためには、WindowsやMacに存在している様々なソフトウェアのiPadアプリの登場や、iPadのブラウザから利用できる形でのクラウド化、そして我々ユーザーの感覚の変化を待たなければならず、必ずしもAppleだけでどうこうできる問題にとどまらない。

それでも、Appleは、社名から「Compuer」を取り去ったときから、モバイルデバイスにその主体を移し、電話以上のことはほぼ全て、タブレットに任せる、そんな道を歩んできたのではないだろうか。そしてiPad Proは、ビジョンにかなり迫るところまできた。

9.7インチiPad Proは、「変化」に気づくには、十分なインパクトのある製品だった。

iPad Proは9.7インチのRetinaディスプレイを備えた、2015年11月に発売されていた12.9インチモデルに準ずるタブレットだ。2014年発売のiPad Air 2と同じ大きさ、6.1mmという厚み、セルラーモデルでも444gという軽量化を実現している。

9.7インチiPad Proのベンチマーク(Geekbenchで測定)

搭載するA9Xプロセッサは12.9インチモデルに比べて性能が抑えられており、A7プロセッサに対して処理性能2.4倍、グラフィックス性能は4.3倍としている(12.9インチモデルはそれぞれ2.5倍、5倍)。ディスプレイとバッテリーのサイズが小さいことで、こうした調整が行われたと考えられる。ただ、一般的な仕様において12.9インチモデルとの性能差を感じることはなく、あらゆるアプリは瞬時に起動し、動画編集も含めてスムーズに動作した。

バッテリーはiPad Air 2から減少していると、分解したiFixitは指摘するが、それでもこれまで通り、10時間のインターネット利用、ビデオ視聴時間を実現しており、昼間の仕事時間のほぼ全てを、途中の充電なしで過ごすことができる。

変わらないデザインとバッテリー性能、大幅に向上した処理性能は、筆者の手元にあるiPad 2やiPad mini 2が、コンテンツ視聴やWebブラウジング、メッセージングなどでまだ通用するように、iPad Proについても、3~4年、あるいはそれ以上の期間も利用できることを示唆する。

例えば3年後、4Kビデオの視聴や編集が多くのPCやタブレットで一般的になっているだろうか。もしも3年後も、こうした作業がオーバースペックだというのであれば、iPad Proの性能は当面、十分通用するレベルを保ち続けると考えて良いだろう。