ユーザーにとっては、体験か料金かという問題があり、データ通信量が限られているため、どうしても料金が気になってしまう、というのが現状だ。Wi-Fiアシストが喜ばれるようになるには、データ料金がより低減されなければならないだろう。そうした未来が訪れるかと言われると、あまり期待はしていない、というのが実際のところだ。

しかしそれでは悲観的に過ぎる、ということで、いくつかの取り組みも見られる。

GoogleはMVNOでケータイキャリア事業に参入しており、Project Fiという名前で米国のユーザーに順次SIMカードを送っている。回線はT-MobileとSprint、そして街にあるWi-Fiだ。

このSIMカードは同じくGoogleのNexusシリーズに対応しており、その場所で最も速度が速い回線を選んで接続する仕組みになっている。つまり、T-MobileかSprintのLTE回線、もしくはProject Fiに登録されている無料のWi-Fiが自動選択される仕組みだ。

iOS 9のWi-Fiアシストが目指す、より良い通信環境を手に入れるという考え方は同じだが、位置情報と回線の状況を判断しながら切り替える、より積極的な通信の仕組みと位置づけられる。

Appleにも、一時期GoogleのようにMVNOの噂が飛び出していた。iPhoneの体験を高めるには、今後ネットワーク面での対処も必要になってくるのではないだろうか。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura