業績不振だった東芝のパソコン事業、Buy-Sell取引は2004年1月から
東芝が「Buy-Sell取引」を開始したのは、2004年1月からだという。 同社のパソコン事業は、2001年度に329億円の赤字を計上。さらに2002年度には71億円の赤字、2003年度上期にも328億円の赤字を計上するなど、業績不振に陥っていたときだ。
そこで、東芝デジタルメディアネットワーク(DM)社からパソコン事業を分割し、社内カンパニーであるPC&ネットワーク(PC)社を設置。西田厚聰氏をカンパニー社長兼PC特別事業改革プロジェクトチームプロジェクトマネージャーとして、「PC特別事業改革プロジェクト」を策定。これにより、開発リソースの絞り込みと、差異化商品への集中、標準品の自社製造からODMへの移管、調達力の強化、固定費の削減などにより、2004年度下期にはパソコン事業の黒字化を達成した。
調達分野では、田中久雄氏をリーダーとする調達ワーキンググループを設置。パソコン用部材の調達コストを低減することを目的として、調達の仕組みを変更。メモリやHDDなど主要5品目において、Buy-Sell取引を導入したという。7月21日の会見では、当時、調達を担当していた田中氏から、PC事業におけるBuy-Sell取引についての説明があった。
田中氏「パソコン事業が大幅な赤字となり、これを立て直すということで、デジタルメディアネットワーク(DM)社から、パソコン事業を分割し、社内カンパニーであるPC&ネットワーク(PC)社を設置。私もDM社からPC社に異動した。このときは、調達のみならず、生産、設計、販売など、パソコン事業に関わる様々な事業構造改革、収益改善プロジェクトが行われた。
調達においては、部品の統一によるコスト引き下げなどを行うなかで、ひとつの手法として、Buy-Sell取引を開始した。これは米国PCメーカーなどの他社をベンチマークした結果、取り入れた手法である。自前で設計したり購入したりしている、液晶、メモリ、HDD、光学ドライブ、CPUは、青梅工場(東芝の調達部門)で購入している価格と、ODMが購入しているものを比べると、青梅工場の方がかなり安かった。
そこで、東芝が部品をまとめて購入して、ODMに供給すれば、コストが下がるということを考えてスタートした。完成品のコストダウンが目的。当時の提案書には、無償支給という言葉で表現されていた。
私の理解では、当時の会計ルールでは、海外の第三者企業に対して、東芝の部品を無償で供給することはいけないとされていた。無償で供給した資産がどこかに行ってしまい、回収ができなくなるという問題が発生するからだ。そこで、有償で供給することになった。
東芝のパソコン事業は、もともと自前設計、自前製造を行ってきた。当時、台湾のODMから調達していた比率は10%程度。構造改革を推進するなかで、徐々にODM比率を増やしていった。2004年度には、為替の影響もあり、PC事業が黒字化したが、当時のBuy-Sell取引によるコストダウン効果は少ない。せいぜい10%程度の利益。PC事業の黒字化にBuy-Sell取引は関係ない」