課題は地域により異なる

欧州の他地域でも同様だが、むしろ問題は「NFC決済端末の少なさ」にあると考える。英国では2012年のロンドン五輪もあり、特にロンドンを中心にNFC対応の決済端末が多数設置されていることが知られている。このほか、筆者が2013年にまわったポーランドではワルシャワやクラクフといった都市で多数のNFC決済端末の存在を確認しており、実際利用率が高いということも確認している。インフラ整備のタイミングの関係で、英国、そして東中欧地域でのNFC対応ターミナル普及率が高いようだ。

一方でフランスやドイツなどでは限定的であり、実際に大手スーパーチェーンなどでも利用できるところは限られている。おそらくはApple Payの導入よりも、これら地域ではインフラ拡大が最優先課題になると考えられる。

インフラ面の課題では日本も同様だ。歴史的背景から日本ではFeliCaをベースとした決済ターミナルが普及しており、これはApple Payの採用するType-A/Bとは互換性がない。将来的に日本では小売店を中心にFeliCaとType-A/Bに両対応したコンボ型のPOSを配置するケースが増えてくるとみられるが、まだまだ時間はかかるはずだ。

結果として、Apple Payの利用できる環境がアジアの他地域に比べても遅いタイミング(少なくとも2015年以降)になると考えられる。日本が他国に比べてタップ&ペイのインフラで進んでいる一方で、Apple Payとの互換性がないために利用に制限がかかるというデメリットも抱えている。ガラパゴスとも揶揄されるが、そもそも「タップ&ペイ」の利用できる環境が日本ほど米国では整っていないことを考えれば、Apple Payを中心に物事を捉えるのは正しいとは思えない。実際、Apple Payが発表されるまでは「NFCは死んだ」という論調が主流だったわけで、筆者もメディアや関係者の掌の返しぶりに苦笑いした記憶がある。結局はタイミングがすべてというわけで、こうした互換性問題は時間が解決すると考えている。