シェア第3位の座をめぐりデッドヒートに

携帯キャリア間競争という意味では、いま米国の状況が熱い。日本では大手キャリアのシェア変動が落ち着いて久しいが(だからこそMVNOが盛り上がっているという事情があると考える)、米国ではいまシェア第3位の座を巡って熾烈なデッドヒートが繰り広げられている。業界大手2社のVerizon WirelessとAT&Tに対抗すべく、第4位のT-Mobile USA買収を目指していた第3位のSprintだが、最終的に政府側の認可が下りないことを受けて親会社のソフトバンクがT-Mobile買収を断念するに至ったことは記憶に新しい

T-mobile買収に動いたSprintだったが……

その後、CEOにBrightstar創業者であるMarcelo Claure氏を迎えたSprintだが、2014年第3四半期時点の契約者数でのT-Mobileとの差は200万人とほぼ拮抗しており、現在のT-Mobileの勢いを考えれば逆転は時間の問題と考えられる。

4キャリアで唯一の契約者数減や固定費負担が重なり、2000人規模のレイオフ発表シリコンバレー拠点の大幅縮小など、あまり芳しくない話題が続いている。

次々と奇策を出して顧客を増やし続けて顧客を獲得しているT-Mobileに対抗すべく、「Cut Your Bill in Half Event」という携帯キャリア乗り換えキャンペーンを打ち出した。これは、Verizon WirelessまたはAT&Tを契約するユーザーがSprintに乗り換えると、通話+SMS無制限プランに加えて複数回線でのデータ通信シェアプランの料金を合わせた家族全体の月額支払いを半分にするという大幅割り引きだ。アクティベーション費用無料化や乗り換えの際の料金縛りに関する負担も一定額まで請け負うという至れり尽くせりのもので、まさに回線契約減少の負のスパイラルに陥っているSprintにとって起死回生の策とも呼べる。

Sprintが展開中の「Cut Your Bill in Half Event」というキャンペーン。ライバルからの乗り換えで家族で支払う月額携帯料金を半分にすることをうたっている

ただ、その効用がすぐに出るかは難しい側面もある。同キャンペーン発表が12月初旬で、開始日が5日ということを考えれば、11月の決算発表を受けてさらに契約者流出が発生し、その止血策ということで急遽打ち出したキャンペーンという可能性も高い。ゆえに10~12月の第4四半期の契約者数はマイナスを食い止めた程度で、2015年以降の反転攻勢にどこまで役立つかはもう少し経過を見定める必要がある。

一方、これに対抗するかのように9日に新プランを発表したT-Mobileでは、2回線で4G LTEを利用可能なファミリープランを月額100ドルで利用可能になり、さらに1回線追加ごとに40ドルという低価格でシンプルな価格体系をセールスポイントにした

T-mobileもSprintのキャンペーンへの対抗策を発表

Sprintが乗り換え前提で、さらに期間限定の半額キャンペーンであることを考えれば、このT-Mobileの料金体系は非常にシンプルでわかりやすい。こうした動きを受け、「米国で携帯キャリアを乗り換えて月額料金削減を狙うユーザーにはいまが好機」と紹介する記事もあればAT&T幹部の声として「Sprintのいまの財政状況や顧客流出状況を考えれば、半額キャンペーンによる効果は限定的」という話を紹介する記事もある

いずれにせよ、米国における携帯回線の新規契約者増加が一段落しつつあるなかで、全回線の3分の2のシェアを握るVerizon WirelessとAT&Tが3位以下のキャリアの狩り場として狙われつつあるというトレンドがあるようだ。2015年は、この米国における携帯キャリアシェア争いの行方に注目したい。