セキュアエレメントの"搭載方法"が問題となる理由
SEには搭載方式が大きく分けて3つ存在する。1つが比較的従来から存在して実績もある「組み込み方式」で、SEをモバイル端末そのものに内蔵する。「eSE (Embedded SE)」とも呼ばれる。2つめが「SIMカード方式」で、UICCと呼ばれるSIMカード内のセキュアな領域にSEとしての情報を記録する。3つめが「SDカード方式」などと呼ばれ、SDカードを含む「eSEとSIM以外の方式でSDカードなど外部媒体にSEを搭載する」ものとなっている。
eSEを選択した場合、「端末メーカー」がSEを利用するようなサービス全般の主導権を握ることになる。一方でSIM方式を選択した場合は、その所有者である「携帯キャリア」が主導権を握ることになる。SDカードの場合は一般に「サービス事業者」自らが配布や管理を行うケースが多い。
多くの場合、eSEとSIMのどちらを選択するかで端末メーカーと携帯キャリアでの主導権争いが行われることになり、これがSEを使った代表的なサービスである「NFC」の普及を妨げてきたともいえる。
よく知られているのが「Google Wallet」の事例で、eSE方式でモバイルペイメントの世界に参入しようとしたGoogleが、Google Walletアプリを搭載した端末(Galaxy Nexus)の携帯キャリアでの取り扱いを拒否されてしまい、サービスインや端末の販売機会を逸した出来事があった。
一方で取り扱いを拒否した携帯キャリア群(Verizon Wireless、AT&T、T-Mobile)は自らのジョイントベンチャーであるISISで、SIM方式を採用した「ISIS Wallet」をやや遅れて立ち上げており、一連のやり取りは携帯キャリア連合によるGoogle妨害が目的だったと考えられている。
実際、サービスインに失敗したGoogleはeSEによる「Google Wallet」での業界参入を諦め、SEを使わない「HCE (Host Card Emulation)」という技術を推進し始めた。HCEは今回の本筋には関係ないため説明を割愛するが、それほどにSEの搭載方法が問題になることを意味している。