ヤフーがイー・アクセス買収で目指すもの

緊急会見の質疑応答の場では「単なる子会社の付け替えではないか?」といった質問も出ており、その効果を疑問視したのか翌28日のヤフー株価は5カ月ぶりの下落率を記録するなど、関係者や投資家の間でも不信感が高まっている。一方で、買収に際して出された資料の中でも強調されているように、今回の買収は宮坂氏が自らイー・アクセスと孫社長に乗り込む形で実現したものだ。ヤフーは現在、過去最高となる16期連続での増収増益を実現するなど、事業は好調そのものだ。ではなぜ、わざわざリスクを背負ってまで携帯事業を買収して自ら携帯キャリアになろうとしているのだろうか?

その答はシンプルだ。ヤフーの事業が近い将来にも厳しい状況に直面する可能性を内包しているからだ。日本最大のポータルとなったYahoo! Japanだが、一方で「ポータル」という概念がしだいに希薄化しつつあり、特に若い層を中心に利用するサービスの分散化傾向が出ているという話がある。

理由はいくつか考えられるが、若年層はLineなどの新しいサービスに夢中といった話だけでなく、サービス窓口となるデバイスの利用動向の変化も見逃せない。かつてのYahoo!はPCを中心に利用が進んでおり、日本ではさらに高機能化した携帯電話(いわゆるガラケー)も加えた形でサービスが拡大してきた。ところが現在トレンドを牽引している若年層を中心とした集団が主に利用しているのはスマートフォンやタブレットだ。

日本のスマートデバイス利用比率は低く、ここがまず狙い目だとヤフー宮坂氏は説明する

最近、某ITニュースサイトに入社した新人の半分がPC経験のない人物だったという話を聞いて驚いた記憶があるが、もはやこうした層にとってPCは必須デバイスではない。緊急会見で宮坂氏も強調していたが、日本ではまだまだスマートフォンやタブレットの普及率が低く、この層を開拓していくのが狙いと述べている。つまり、何年か後にやってくるであろうヤフー衰退期に備え、先行投資でビジネスチャンスを獲得していきたいというわけだ。