映像分野では、4Kの再生・録画の処理に耐えられるかどうかに注目が集まるだろう。もちろん、まだまだ家庭に4Kを表示できるディスプレイが行き渡っていないが、4Kで撮影した動画を処理して、マルチアングルのフルHD動画を作り出したり、少し異なる映像体験を作り出すこともできるはずだ。

また大容量のコンテンツを取り扱うため、LTE以上にWi-Fiの高速化が必要だ。もしストレージを持たないApple TVが4Kの映像に対応したとしても、インターネットからストリーミングをすることは現実的ではないため、MacかiPhone、iPadからコンテンツを送り込むことになる。その際に利用するのはWi-Fiになるからだ。

そしてなにより、バッテリーだ。大画面化、処理能力の向上という要素以上に、生活のハブとして機能する場合は、1日過ごしてちょっと余る程度のバッテリーライフが欲しい。iPhone 5sはプロセッサの性能向上とともに、バッテリーライフを据え置いたことは評価される。裏を返せば、iPhone 5でバッテリーに不足を感じていた人にとっては、引き続き、バッテリーが足りない状態にあるということだ。

ただ、この問題の改善は、期待薄かもしれない。というのも、実際Appleのあるカリフォルニアでの生活では、バッテリー不足を感じることはないからだ。自宅と職場では充電でき、さらに車で通勤していれば、その移動中も充電しながら音楽を聴いたりナビを使ったりできる。現在のiPhoneのバッテリーライフが大きな問題であると感じることはない。

地域差や個人差以上に、Appleが何をやろうとしているのか、が優先されるのがiPhoneのみならずApple製品の常だ。この点は、グローバル向けに1つの製品を作り出している企業と、それを好んで使うユーザーの双方にとってジレンマといえるだろう。

松村太郎(まつむらたろう)
ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を追求している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura