―ほかに、英語を学習していくうえで、心がける点、間違った勉強の仕方などがあれば教えてください。
ショーンK:心がけてほしいのは、スピーキングは「スピード」ですね。リアクションを速くすることが大切です。Responsiveness(反応速度)です。
それから、リスニングは文章を目で追わないことですね。聞きながら文章を追っていたら意味がないですから、リスニングした後に文章を確認してください。
また、リスニングする際は、雑踏の中で片方のイヤホンだけで聞いてください。静かな場所で両耳にイヤホンを付けて聞くと、はっきり聞こえますが、実際そんな「無菌室」のような状況はありません。実際にあり得る環境でやることも覚えておいてください。
発音に関しては、「th」で舌をかんだり、「r」で舌を巻くことを覚えるより先に、「アクセント」を覚えるにつきます。
たとえ「th」や「r」ができていたとしても、アクセントができていなければ、外国人には全く伝わらない。発音にこだわり過ぎずに、実直に言葉を出してみてください。
―最後に、英語を学ぶ日本のビジネスマンにメッセージをお願いします。
ショーンK:実は「ビジネス英語」という言葉を使っているのは日本だけです。「仕事で使うための英語」という意味だと思いますが、根本的には「伝えたいこと」を話せるかという点で日常会話と変わりはありません。
むしろビジネス英語は目的が、契約を取り付けるとか、値段交渉すること、など目的がはっきりしているので、絶対的に簡単です。
ビジネス英語と聞いてすぐにMBA用語集やTOEIC対策に走りがちですが、契約にかかわるビジネスだからこそ、昨日単語集で勉強した自信のない難しい言葉(big words)や業界用語(buzzwords)は避け、慣れ親しんだ簡単な単語と構文でしっかりと伝えることが大事です。
むしろ、アフターワークの英語の方が圧倒的に難しい。
アフターワーク、つまり職場、会議室を離れた時の会話は、その人の語学力以上に人間としての魅力が試されます。
それこそ「震災後、日本経済が今どうなっているのか?」から「1年ごとに総理が回転ドアのように入れ替わる政治」、歴史、中国との関係、キリスト教一神教に対する八百万(やおよろず)多神教的価値観、ジョブズも脱帽した日本のものづくりのすごさ、ビジネスパーソンなら読んでいるはずの本からの引用(amazon.com米国ビジネス本ベストセラーはチェックしておくこと)、たまには気の利いたジョークと、話題も状況(新たなメンバーや家族が紹介されたり)もどんどん変わります。
話題の豊富さ(守備範囲)、思慮深さ(深さ)、瞬発力や会話を引っ張るのか、たんなる傍観者か、など色んな点で試されている現場だということです。
知識だけではなく、豊かな人間性も必要。だから、「ビジネス英語」という言葉にとらわれず、もっと広い視野で英語をとらえて、身に付けていってほしいです。
皆さん日本人は、勉強熱心ですし、アウトプットの量を増やせば短期間で必ず英語で伝えられるようになるはずです。そのためにも、私のおすすめした学習方法をぜひ試してみてください。
●お話を伺った方
ショーン・マクアードル川上(ショーンK)氏
経営戦略コンサルタント。さまざまな事業領域における外資系、日系企業の経営戦略、経営再建、事業開発、戦略提携(M&Aなど)、グローバル経営などへの助言、支援を行うブラッドストーン・マネジメント・イニシアチブ代表取締役。現在、東京、ニューヨーク、パリ、シンガポールなど7都市を拠点に経営コンサルタントとして活躍。ベンチャー育成、創業支援、ビジネスリーダーのためのスキル開発トレーニングなどの活動にも従事。また、執筆、ラジオ、テレビのパーソナリティ、コメンテーターなどマルチな活動を展開中。主な著書に「プロフェッショナルの5条件(朝日新聞出版)」、「MBA講義生中継 経営戦略(TAC出版)」、「自分力を鍛える(あさ出版)」、「即聴⇔即答ビジネストレーニング(アルク)」などがある。
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