ベンチマーク環境

さて、それでは今回テストに利用した製品を紹介したい。Zacateについては、MSIのE350IA-E45(Photo18)である。同製品は今月に入って秋葉原などの店頭に並ぶようになったが、この量産製品と比較するとファンの取り付け位置やカバーの構造などが異なっているのが判る。とはいえ異なるのはこれだけである。バックパネルはこんな感じ(Photo19)で、VGAとHDMI、USB×8(うち2ポートがUSB 3.0)、GbE×1、5.1ch Audio+S/PDIF端子、及びPS/2マウス/キーボード兼用×1といった構成だ。搭載するチップセットはAMDのA50 FCH(Photo20)。他に、USB 3.0コントローラ(Photo21)、GbEコントローラ(Photo22)、HDA(Photo23)、周辺I/Oチップ(Photo24)などが搭載されているのが目立つ程度だ。

Photo18: 異なるのはファンカバーとファンだけの模様。やはりチップセットにも多少は冷却が必要だったということだろうか? ちなみに今回はAMDより借用。

Photo19: Mini-ITXとしてはかなり機能が充実している部類に入ると思う。BIOSのバッテリバックアップ電池の配置場所がちょっと独特である。

Photo20: 開発コード名はHudson M1。FCHはFusion Controller Hub。サウスブリッジでもいいのに、と思わなくもないが、Display出力関連が新たに追加されているから、区別の意味でFCHに切り替えたのだろう。

Photo23: 同じく台湾RealTekの7.1ch HDA Audio ControllerのALC887。ALC888のOEM向けバージョンである。

Photo24: 台湾FintekF71808A。Super I/O兼温度/電圧制御モニターという多用途チップ。

BIOSを見ても、目立つようなオーバークロック機能はないのは製品の性格を考えれば当然か。メモリはDDR3-1333までをサポートする(Photo25)。ちなみにPhoto25でもちょっとそれっぽいフォントになっているが、既にUEFI化がなされていた(Photo26)。

Photo25: DRAM Voltageの設定こそ可能だが、メモリそのものはDDR3-1333以上をサポートしておらず、また本体のベースクロックをいじるような事もできない。せいぜいがタイミングパラメータをいじって多少CL値を減らす事が出来る程度である。

Photo26: この画面で明確にUEFI BIOSであることが判る。

ちなみに試用したものは、BIOS VersionがV1.0B20というかなり古いもので、ベンチマーク中にはこんな画面になったりする(Photo27, Movie01)など、やや安定性に掛ける場面に何度か出くわした。最新版はVersion 1.4なので、このあたりの振る舞いはもう少し安定していると思われる。CPU-Zの結果はご覧のとおり(Photo28,29)。キャッシュに関してはRMMAの結果も取得してみた(Photo30,31)。Windows 7インストール後のプロパティはこんな感じ(Photo32)。Windows Experience Indexは、やはりCPUが一番低くなった(Photo33)。GPU-Zに関しても、試用時のバージョンではZacate未対応ということで、意味のあるデータは表示されていない(Photo34)。

Photo27: RMMAを実施していると、激しく画面全体がフリックする。もっともフリックするだけで別にそのままクラッシュしたりフリーズしたりはしないのだが。

動画
Movie01

Photo28: 2月18日にリリースされたVersion 1.57ではZacate/Ontarioのサポートが追加されたが、これを入手するまえに機材を返却してしまった関係で、1.56での結果である。

Phtoo29: とりあえずキャッシュのデータは正しく取得できている。

Photo30: 各キャッシュの容量は正しく取得できているようだ。Latencyは、まだ測定を行っていないために当然N/Aのまま。

Photo31: TLB情報。I-TLBについては、LP(Large Page:2MB Page)の場合がL1に、通常のページがL2に、それぞれ分類されている。

Photo32: 一応64bit版を入れているのだが、それでも3.62GBしか余らないというのは多少デバイスのマッピングに無理があるということでもある。

Photo33: GPUに関しては比較的健闘していると言って良いと思う。メモリも1chの割には良いスコアというべきか。

Photo34: それでもシェーダー80基が正しく認識されていることを褒めるべきか。

また今回、比較対象としてはIntelのAtomと、VIAのNanoをそれぞれ用意した。Atomの方はAtom D525にNVIDIAのIon2を搭載したASUSTeKのAT5IONT-Iを、NanoはVIA純正のVB8001を利用している。それぞれのGPU-Zの結果とSystem Property、Windows Experience Indexの結果を示すが(Photo35~40)、AtomはともなくNanoには相当つらい結果であろうことが十分予想される。

Photo35: Atom D525。今回のZacateの競合製品としては丁度手ごろな構成であろう。

Photo36: ちゃんとメモリは4GB認識される。

Photo37: さすがにION2を搭載するだけあって、グラフィック周りのスコアはそれなり。

Photo38: 動作周波数は1.6GHzだから、コアあたりの性能を比較する分には差し支えないだろう。

Photo39: Windows Experience Indexはともかく、64bit OSでここまで利用可能メモリ量が減るのはちょっと構成に問題がありそう。

Photo40: ProcessorのScoreも2.5だが、Graphicsもなかなか絶望的。まぁ内部は(実はPCIeではなく)AGP接続のChrome9 HDだから、仕方ないのだが。

テスト環境は表1に示す通りだ。今回の場合、

MSI E-350 : DDR3 DIMM×2(DDR3-1333)
ASUSTeK AT5IONT-I : DDR3 SO-DIMM×2(DDR3-800)
VIA VB8001 : DDR2 DIMM×2(DDR2-800)

とそれぞれ要求するDIMMと速度が異なるので、一応メモリ容量を4GBに揃えたが、実際の速度を見てみると、

MSI E-350 : DDR3-1333×1ch
ASUSTeK AT5IONT-I : DDR3-800×1ch
VIA VB8001 : DDR2-673.2MHz×1ch(DRAM Frequencyは336.6MHz)

とかなりまちまちになっている。HDDはいつものHGSTの500GBであるが、今回はRAID構成はとらず単体での利用である。

■表1
CPU AMD E-350 Intel Atom D525 VIA Nano L2200
Motherboard MSI E350IA-E45 ASUSTeK AT5IONT-I VIA VB8001
BIOS Version 1.0B20 Version 0316 Version 6.00 PG
Driver Brazos BETA Driver Inf Driver 9.1.1.1019 4in1 v5.14A
Memory Corsair
CM2X2048-6400C5
PC2-6400 2GB CL5×2
NANYA
M2S2G64CB88B5N
PC3-10700 2GB CL9×2
NANYA
M2F2G64CB8HA4N
PC3-10700 2GB CL9×2
(PC3-6400 CL6として利用)
Video Onboard Radeon HD 6310
Brazos BETA Driver
OnBoard ION2
Driver 197.45
Onboard VIA Chrome9 HC
4in1 v5.14A
HDD HGST DeskStar HDP725050GLA360 500GB SATA 2.0 HDD(NTFS Format)
OS Windows 7 Ultimate 64bit 日本語版

ベンチマーク

それではいつもの様に、ベンチマークを通して結果を見て行きたい。今回の場合、主目的はZacateに搭載したBobcatコアの特徴を掴むことである。ちなみにグラフ中では、

Zacate : MSI E-350
Atom+Ion2 : ASUSTeK AT5IONT-I
Nano : VIA VB8001

と表記している。