考察
RMMAの結果を中心に、ZacateというかBobcatコアの特徴をまとめてみた。全体を通してのBobcatコアの印象は、RMMAの最後のまとめとほぼ同じく、「ピーク性能は高くないが実効性能はかなり高い」というものである。フロントエンドの重厚さやバックエンドの高いI/O性能に比べると、実行ユニットのやや貧弱さが目立つが、効率よく処理を行わせるという観点ではこの位のバランスが丁度良い、と判断されたのだろう。実際SYSMarkやPCMarkの結果はこれを裏付けている。逆に今回はテストしなかったが、CineBenchとか各種の動画エンコーダなどでの成績は、それほど芳しくないと想像される。これはD-Cacheのスループットが8Bytes/cycleに抑えられている事とか、Memory AccessがおそらくGPUとの共用の関係で帯域を下げられていることに起因する。こうしたマルチメディア処理では、実行ユニットの性能と同じくらい、広帯域なメモリアクセス性能が必要になってくる。まぁこうした処理にあわせた構成にすると、どうしても消費電力は増える方向に行ってしまうから、割り切りをしたと思われる。
とはいえ、今回集めた3種類のプラットフォームの中で、一番普通に使えるのがZacateベースだったのは間違いない。普通、というのは「操作中のストレスが少ない」という意味で、Atom D525+Ion2のAT5IONT-Iですら、Zacateを触る前は「それなりに使えるかな?」という印象だったのが、触った後は「あ、ちょっともっさりしている」という気分にさせられた。
Atomは? というと、もう少し動作周波数とGPU性能が上がればかなりいい感じになりそうである。が、そもそもNVIDIAはION2の後継を出す予定はないし、Intelの内蔵GPUは当分期待できそうにない。もともとデスクトップ向けに使うのがちょっと無茶な製品だから、これはこれで仕方ないのだが、Zacateを見た後だと見劣りするのは致し方ないところ。
Nanoは? というと、こちらは初めからデスクトップで使うのが無茶な製品である。もっとも、1コアだから悪いのであって、1月に発表されたNano X2を持ってくればもう少し良くなるか……といえば、良くはなるだろうが、Atomのレベルまで行くかどうかは甚だ疑問である。そもそもRMMAの結果をみても、非常に使いこなしが難しいというか、これで性能を出すためのチューニングは大変な作業だろうなぁ、と想像させるものだけに、Dual Coreでどこまで互角の性能を引き出せるかは疑問である。もっともNanoにしてもNano X2にしても主戦場は組み込み向けなのであって、デスクトップ向けやモバイル向けと異なりアプリケーション側でNanoにあわせた最適化を施す余地があるから、これはこれで良いのかもしれない。
そんなわけで今回の結論は「Bobcatコアは予想以上に良い」というものとなる。ただ、絶対的な性能は「それなり」なのであって、あまり分不相応な作業をやらせないのが、うまく使いこなすためのキーとなりそうだ、と筆者は考える。