考察
ということで長々と比較してきたが、結論で言えばSandy Bridge恐るべしである。これまで4コアでは最高速だったCore i7-975 Extreme Editionと比較して、性能面で上回り、消費電力は低く、そして価格がはるかに安いというCore i7-2600Kは、どう考えても「買い」である。というか、もはやCore i7-975 Extreme Editionを購入すべき理由はどこにもない。Intelの場合、更にハイエンドには6コアのCore i7-980 Extreme Editionが控えているわけだが、以前のテストでも示した通り通常のアプリケーションでは6コアはもてあまし気味だから、たぶん真っ向勝負してもCore i7-2600Kが有利、というケースが多いだろうと想像される。
内部構造にずいぶん手を入れたことで、確実にIPCは向上しており、しかもバランスを崩していない。たとえばL1→Fetchの帯域を32Bytes/cycleに増やしたのはAMDのBarcelonaの方が先だが、こちらは増やしたのがL1→Fetchのみで、L2→L1やL3→L2は手付かずだったから、折角の帯域増はほとんどメリットとして感じられず、おまけに消費電力の大幅増を招いたためにバランスの悪い製品に仕上がり、わずかな期間で消えてしまったのはご存知の通りだ。Sandy Bridgeは、こうしたバランスを慎重に検討して決めた模様で、非常に筋の良い製品に仕上がっている。
おまけに価格が恐ろしく安い。これまでIntelは、性能や消費電力はともかく、価格面ではAMDに比べてだいぶ上に値付されており、これがゆえにAMDは高コストパフォーマンス性をアピールすることで一定のシェアを掴んでこれたのだが、今回の価格は明らかにAMDの価格を睨んだと見られるものになっている。ここまでCPUの価格が下がると、またマザーボードを買いなおしという点もほとんど気にならないほどで、AMDの側は少なくともBulldozerベースの製品が出てくるまでかなり厳しい戦いを強いられることになるだろう。
弱点といえば、やはり内蔵GPUが依然としてローエンド向けでしかないことだろう。もちろんたとえばSYSMarkの結果などでもわかるように、通常の利用には問題はない。が、ことゲームを遊ぼうとなった瞬間に、内蔵GPUではお話にならないという状況が続くのは変わらないようだ。一説によれば、次世代となるIvy Bridgeでは更にEU数が倍増されるらしいのだが、その頃には要求レベルも更に上がっているわけで、相変わらずローエンドという環境は変わらないだろう。AMDが付け入る隙があるとすればこの部分で、Full DX11対応のコアを入れてくるLlanoはきっと良い勝負になるだろう(というか、ここで勝負できないと真剣にヤバいことになる)。
というわけで、Sandy Bridgeに対する筆者の見解は「買い」である。まぁすでにCore i7-975とかを持っている人が、捨てて買いなおすほどか? といわれると微妙(ゲームとかだと、それほど大きく性能が上がるわけではないのはベンチ結果で明らかである)であるが、新規購入あるいはリプレースを考えている人には強くお勧めしたいところだ。
あと「何を買うか」も微妙だが、とりあえず予算にゆとりがあればCore i7-2600K、厳しければCore i5-2500Kがお勧めだ。"K"無しモデルとの差は$20程度だから、どうせならば"K"付きモデルをお勧めしたいと思う。