デザインはユーザー次第だが質の高さではMG6130
複合機をごく単純に言えば、インクジェットプリンタとフラットベッドスキャナを組み合わせた周辺機器、ということになる。複合機が世に出てきた当初は、プリンタ部分の上に取って付けたようにスキャナ部分が乗っかっているようなデザインで、およそスタイリッシュと呼ぶにはほど遠かった。
しかし、複合機が進化していく過程でデザインも大きく変化し、今ではインテリアとしての側面も強く求められるようになった。多くの複合機が無線LAN機能を搭載することでワイヤレス化が実現し、USBケーブルやLANケーブルを必要としなくなったことも大きい。おかげでパソコンから離れた部屋、リビングルーム、書斎の本棚などに複合機を置くといった、自由度の高い設置が可能になった。コピー機能やスキャナ機能を使うとき、印刷物を手に取るときと、結局は複合機の前に行く必要はあるのだが、それでも置き場所を選ばないのは大きなメリットだ。また、リビングに「いかにもパソコンの周辺機器」といったデザインは家族の反感を買う場合もあり、インテリアとしてのスタイリッシュさが求められるようになったわけだ。
そこでEP-803AとMG6130だが、一昔前のプリンター然としたデザインとは打って変わり、非常にスマートでスタイリッシュなデザインとなっている。デザインに関しては好みに大きく左右されるので、どちらを気に入るかはユーザー次第だが、細かな部分を見るとMG6130のメモリカードスロットにはカバーがあったり、排紙トレイがゆっくりと自動でオープンするなど、細かな部分に気が遣われている点に好印象を持った。機能をアップしながらコストを下げなくてはならない厳しい競争の中で、このような部分は真っ先に省略される傾向にあるが、キヤノンのモノ造りに対する拘りが強く感じられる。対するEP-803Aは、コストダウンのために細かい作り込みでは明らかにMG6130に劣るが、ホワイトモデルなどを用意することによって女性層やファミリー層から支持を集めることに成功している。
EP-803Aはメモリーカードスロットがむき出しになっている。ホコリやゴミ、タバコのヤニの侵入による万が一の読み取りエラーを防ぐという意味でもカバーはあったほうが良いと思うのだが… |
MG6130はメモリーカードスロットにカバーを装備している。長く使用するためには必要だが、たったこれだけの仕組みでもそれなりのコストアップにつながってしまうので、このような配慮は好印象である |
僅差でフルモデルチェンジした「PIXUS MG6130」に軍配か
比較してきたポイントを総合的に見て、若干だがキヤノンのMG6130に軍配を上げたい。理由は、よく練られたユーザーインタフェースのインテリジェントタッチシステム、収納できる背部の多目的給紙フィーダと最大給紙枚数の多さ(A4用紙最大300枚)、標準で自動両面印刷機能を搭載といった部分が、EP-803Aより優れているためだ。
さらに細かい部分にも気を配ったデザインと質の高いボディ、顔料ブラックとフォトブラック(染料ブラック)を組み合わせた6色インク構成、最小1ピコリットルの微細なインクドロップサイズでの高画質印刷といった部分も見逃せない。ただし、CD/DVDトレイのセット方法が面倒だったり、インクカートリッジのセットや交換で本体内部に手を伸ばす必要があるといったマイナスな部分もある。
一方のEP-803Aも設計が古いこととコストダウンの影響がどうしても目につくが、印刷品質や各種の動作速度には不満は出ない。また、長年課題となっていたヘッドの目詰まりも前モデルまで搭載していたオートクリーニング機能をやめてヘッド周りの素材そのものを変更することにより大幅に減ったようだ。
どちらにしてもEP-803AとMG6130は、これからしばらくインクジェット複合機の全体を引っ張っていく2強であり、買って損をしない製品であることは確かだ。後は個人の使用環境に合わせて用紙の取り回しや液晶メニューの操作性などを考慮しながら納得の選択をしていただきたい。