Tearable~破く快感をバーチャルに味わおう
地味ながらも、そのインタラクション(行為)が無性に心地よいことが人間にはある。たとえばエアキャップ、俗称プチプチと呼ばれる、空気をビニールのセルで覆った緩衝材を潰す行動。とても地味な行動だが、あれにハマってしまう人は多いし、それがムゲンプチプチなる玩具までを生んだ。
この他、身近なものとしては「紙を破る」というのも「地味な快感行動」に含まれるのではないか。幼児などは特にそうだが、紙を破る時の手応えは、ある種快感として感じられ、「面白い」と知覚される場合がある。
ここに目を付けた大阪大学の研究グループは、実際には紙を破らずに、無限に紙を破く快感が味わえる「Tearable」というデバイスを開発した。なんともユニークな研究だが、テーマとしては触覚学(HAPTICS)分野に分類されることとなる。
紙を破いたときの手応えを再現する……となったとき、真っ先に考えつくのがモーターなどを用いた電動制御など。ただ、紙を破いている最中の抵抗力の振動はとても周波数が高くなるため、実現が難しい。
そこで研究グループは大胆にも"ローテク"にその答えを求めた。それはマジックテープ。
マジックテープの引き離し動作が紙を破ったときの抵抗力の振動にとても近いことを発見した研究グループはこれを装置に組み込んだのだ。
被験者はテープのようなものを掴み、これを紙を破く動作のように左右の手を前後に動かすように力を入れる。被験者の掴んだ左右のテープの裏側にはマジックテープが貼り付けてあり、これが箱の内部の軸側のもう一方のマジックテープにコンタクトされている。力を入れることによってマジックテープが剥がされ、その振動が紙を破いたときの疑似感覚として伝わるというわけだ。被験者が掴むテープは輪状になっているので、テープを引いても引いても、その破く行為に終わりが来ることはない。まさに「無限紙破り」といった風情。
さらに紙の厚さや堅さによって手応えが変わることを再現するために、モーター制御の抵抗力を箱内部の軸側のマジックテープに与え、力を入れないとマジックテープが剥がれない演出をも与えられるようになっている。
展示機はプロトタイプなのでやや大きいが、意外にも仕組みは単純なので、小型化して幼児向け玩具としての製品化も夢ではないかも?
■オフィシャルサイト