来場者との質疑応答

ここからは、来場者からの質問への志倉の回答を紹介していこう。

■ニトロプラスとの関係
まず一番最初に『CHAOS;HEAD』をやろうと思ったとき、人の妄想って、たとえばエロい妄想をする人もいれば、猟奇的な妄想をする人もいて、とにかく男子だったらいろいろな妄想をすると思うんだけど、やはり妄想をテーマにするとなると、中身は当然、ある意味エログロナンセンスみたいなものになるかなって思ったんですよ。それを想定したときに、どんなハードに落とし込めばいいか? 志倉はですね、PCの時代のアドベンチャーゲームが大好きだったということもあって、どうしてもパソコンでそのゲームを作品にしたかったんですね。それで、PCゲームメーカーをいくつか頭の中で考えて、一番その作品にあっているのはどこかと思ったとき、やはりカラーが合っているという意味で、ニトロさんを選びました。ニトロさんがまさにエログロナンセンスにぴったりじゃないかと。

最初、ほぼ飛び込みで行って、『CHAOS;HEAD』はこういう作品だっていうプレゼンをやったんですよ。最初は二時間ぐらいのプレゼンで終わったんですけど、そうしたらニトロさんもスタッフ全員を呼びますっていうことになって、今度は14、5人のスタッフを前にしてさらに6時間。よく付き合ってくれましたよ。そんなこんなで一緒にやることになりました。その当時でいうと、『咎狗の血』というニトロさんの作品のスタッフロールに、実は志倉千代丸って出てくるんですよ。何をやったかというと、彩色、色塗りのお手伝いですね。もちろん僕が塗ったわけではなく、人を紹介したりしたんですけど、そういったところでも繋がりはあったんですよ。

ニトロの作品は一通りみんな知っていますが、拳銃にこだわったり、車にこだわったり、一つ一つのディテールにこだわるスタンスがすごく好きだったんですよ。それで、いろいろな意味でカラーに合うかなと思ったので、ニトロさんに話を持っていったという感じですね。それ以来、懇意にさせていただいているので、『STEINS;GATE』など、科学シリーズはニトロさんと組んでやっていくという感じになっていますね。

■5pb.に入社するには
普通にちょくちょく募集してますよ。音楽事業部はやってないけど……。音楽事業部がいいんですか? 制作をやりたい。じゃあ、履歴書を送ってもらえれば。常に募集中なので。作品も何かあるなら一緒に。同人音楽をやっているんですか? 同人音楽はすごく興味があるので、ぜひ。

■志倉千代丸の作曲法
ほぼ作曲は車でやっているんですよ。それで、まずサビから作りますね。まずサビを作って、サビのメロディに対してコードをつけて、そのコードにつながるBメロのコードを考えて、今度はそのBメロコードにメロディをつけていくといった感じですね。サビのメロディは、まったくコードを意識せずに作ります。先にコードをつけちゃうとメロディの幅に制限ができてしまうので。完全に自由にメロディから作る感じですね。ちなみに、サビを作った後、そこに繋がるBメロは毎回10パターンぐらい作るんですよ。で、その中から、一番いいものを選んで、さらにそのBメロにつながるAメロも10パターンぐらい作り、どれが一番いいかを選ぶ。それが全部別のレイヤーになっているので、そのつながりをいつも100回ぐらい聞いて試しながら、一番いいつながりを模索するといった感じですね。

最終的には鍵盤で作りますが、基本的にはいつもICレコーダーを持っていて、そこにメロディをたくさん仕込んでおいて、ある程度たまったところで、鍵盤で全部打ち込むという感じですね。

■編曲について
一次編曲といって、アレンジャーに渡す前に自分で一度編曲をしています。これはなぜかというと、たとえばアニメの製作委員会などで曲を聴かせるタイミングがあるのですが、その曲に対して、委員会のメンバーみんながいいですねってことにならないと、採用してもらえないんですよ。そういう大人の事情があり、アレンジをしてもらってからNGということになると、アレンジャーさんの労力が無駄になるので、一番最初のデモまでは自分で作っています。音楽に携わっていないスタッフさんもたくさんいらっしゃるので、やはりある程度アレンジされて、形になったものを聴かせないと、メロだけでは届かない事が多いんですよ。

■音源について
今はほぼソフトウェア音源だけでまかなえてしまえますね。もちろん単体のシンセも使いつつですけど。今はソフトウェア音源がすごく発達していて、レイテンシなどの遅れもないので、十分ソフトウェア音源だけでいけるのではないかと思います。ピアノの音源だけでも、ギガ単位のサイズで提供されているものもあります。一つの音を一分近く余韻までサンプリングされているような音源です。ループ部分がないので、当然リアルなピアノの音が再現できてしまいます。なので、今はもうソフトウェア音源のほうが、単体シンセよりも色んな意味でリードしていると思います。

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