科学的方法論と工学教育の必要性

引き続き水川氏は、図を提示しながら、ロボット教育の意義や、工学教育の必要性について語っていった。

「大事なのは覚えることではなく、まず現象を見て"疑問"を持つこと。そして、答えをすぐ教えてもらうのではなく、自分で考えて"仮説"を立て、実際に試して"検証"して、正しいかどうか"一般化"する。こうした"科学的方法論"のサイクルを経験させる場をいかに作るか。これがないと科学や技術という本当の"知恵"は出てこず、ただ覚えて吐き出すだけのマニュアル人間になってしまう」

疑問→仮説→検証 "科学的方法論"のサイクル

水川氏は、ロボットの基本的な構造は簡単だと言う。

「センサで外の情報を取り込み、それを処理して、手足で外に運動を通して働きかける。これをリアルタイムで実行するシステムを体内に持っている。これはROBO-ONEに出場しているような人が操縦するロボットでも同じで、状況に対してパターンを選び、生成することで、いろんな動きをさせていく」

"ロボットとは"……基本的な構造は簡単?

しかし、基本は簡単と言っても、いきなりロボットを作ることはできない。高校までに自然科学は習うが、そこからモノにするまでにさまざまな勉強が必要だ。

「大学に入ると、機械工学、電気工学、コンピュータなどバラバラに習うが、ロボットは総合。ボディの構造設計、プログラミング、デバイスや回路の設計をして、実装までしなければいけない。"工学"とは、ある目的に沿って科学的知識を体系化したもの。表現の方法として自然科学の言葉、物理などの方法論を使うが、科学とは違う」

"ロボットの構成要素と工学技術"

「子ども達が習うのは理科と算数。そこから工学までの距離が遠い。そのギャップを埋めてやる必要がある。目的が分からないと、単なるお勉強になって、覚えて吐き出すだけになりがち。その知識がどう使えるか分かれば、重要性も分かるし、勉強する面白さが出てくる。その分野の歴史も一緒に学べばより分かりやすくなる」