Digital Sports Using the "Bouncing Star" Rubber Ball Comprising IR and Full-color LEDs and an Acceleration Sensor~現実世界とコンピュータ世界を相互インタラクトしてプレイする新しいスポーツの形

コンピュータグラフィックスはあくまでコンピュータの中で作り出されたものであり、現実世界には実体として存在しない。これを現実世界に実体として具現化させてインタラクトできるようにしたり、あるいは現実世界側の実体物を動かすことで直観的かつ直接的にコンピュータ世界へインタラクトするインタフェースを「タンジブル・インタフェース」(Tangible Interface)という。簡単に言えばバーチャリアリティの一種だ。

このタンジブル・インタフェースの研究を拡張したスポーツが実現できないものか……として電気通信大学 人間コミュニケーション学科 児玉研究室が開発したのが「Bouncing Star」(跳ね星)だ。

Bouncing Starは内部に仕掛けられたLEDがキラキラと輝く直径10cmほどのボールで、これを床に投げることで、床面に描かれたコンピュータグラフィックス世界にインタラクトできるようなシステムになっている。

現在までに様々なゲーム(スポーツ)を開発してきており、分かりやすいものとしては以下の写真の「ブロック崩し」などがある。今回のSIGGRAPH 2008用には新作ゲームを開発して展示に望んだとのこと。

床に描き出された映像に対してボール(Bouncing Star)を投げてインタラクトすることを楽しむ

「ブロック崩し」もある

動画
実際のプレイ風景 (WMV形式 9.34MB 4分45秒)

その新作ゲームとは、4メートル四方の床面上にランダムに並べられた星くずの映像を、投げるBouncing Starの軌道でぶつけて消していくというもの。簡単に喩えるならば、平面全体を使ったボーリングのようなゲームだ。

Bouncing Starは床に弾むたびに内部のLEDの発光パターンがキラキラと変わり、展示会場の暗さも手伝って、そのきらめく軌道は実に幻想的。Bouncing Starと衝突した星くずは迫力の爆発音と共に花火のように崩壊し、そのエフェクトも美しく描かれる。担当者も「新しいデジタルスポーツであると同時にインタラクティブアートとして提案していきたい」と述べていたが、まさしくその表現が的を射ているといえる。

仕組み自体は意外にもシンプルで、現行技術をスマートに組み合わせたものになっている。Bouncing Star内部には6面体状の基板が仕込まれており、ここにフルカラーRGBのLED、赤外線LED、バッテリー、制御マイコン、加速度センサー、Bluetoothモジュールなどが組み込まれている。

ボールを弾ませたり、蹴ったりといった衝撃を加速度センサーが感知、その衝撃に応じてLEDの発光パターンを内蔵マイコンが切り換える仕組みを採る。床面に描き出されるゲームフィールドは天井に吊られたプロジェクタからの投影映像で、映像そのものはホストPCから出力されている。ボールの位置情報やバウンス情報は、ボール内部に6方向に向けて実装された赤外線LED発光を高速度250fps撮影可能な赤外線カメラで捉え、画像認識のアプローチでリアルタイム算出している。

現在はメンテナンス的な問題や強度的な問題で、ボールを思い切り蹴ったりバットで叩いたりするようなスポーツには適合できないため、Bouncing Starを使った「ならでは」のタンジブル・デジタル・スポーツを考案していきたいとしていた。

今後、現状の問題が解決し、現存するスポーツのボールにBouncing Starが使われるようになれば、球技に新しい楽しみやエンターテインメントが生まれるようになるかもしれない。今後の進化にも期待していきたいところだ。

今回のSIGGRAPHにあわせて開発されたBouncing Star向け新作ゲーム。床面に描き出された星くずを、投げたBouncing Starの弾道で破壊していくというボーリング的なゲーム。うまく連鎖で破壊すると派手な爆発音とエフェクトが!

(トライゼット西川善司)