ピクチャーコントロールはスタンダードかニュートラル

D700にはニコンの新しいカラーモード「ピクチャーコントロール」が搭載されている。モードは「スタンダード」「ニュートラル」「ビビッド」「モノクローム」の4種類。標準は「スタンダード」だが、これもずいぶん鮮やかだ。好みもあるが、「ニュートラル」を常用してもいいだろう。「ビビッド」はかなり派手で、彩度の高い被写体は簡単に張りついてしまう。よほど色のないシーンか、何か表現を狙う場合以外は、あまり使わないほうがいい。

他メーカー同様、コントラストや彩度が調整できる。ユニークなのは「クイック設定」だ。これは各パラメーターをまとめて強弱するもの。個別に設定している時間がない、わかりづらいといった場合に重宝する。もうひとつ、調整時の「グリッド表示」もいい。これはコントラストと彩度を軸に、各モードをグラフ化したもの。全体でどのあたりに位置するかがひと目でわかる。

カラーモードの「ピクチャーコントロール」はカラー3種とモノクロ

輪郭強調、コントラスト、彩度をまとめて変更できる「クイック調整」がユニーク

設定がどのあたりなのかひと目で分かる「グリッド表示」

ピクチャーコントロールを変更して撮影。左からスタンダード、ニュートラル、ビビッド、モノクローム
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 29mm(FX) / マニュアル(F6.3、1/160秒) / ISO 200 / WB:オート

同じく、ピクチャーコントロールを変更して撮影。左からスタンダード、ニュートラル、ビビッド、モノクローム
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 42mm(FX) / プログラムAE(F8、1/250秒) / ISO 200 / WB:オート

アクティブD-ライティングはもうひとつの露出

「アクティブD-ライティング」は白飛びや黒つぶれを抑える機能。後処理を行なうために記録に若干時間がかかるが、魅力的な機能である。実際に試すと、明るい側を抑える効果よりも、暗い側を持ち上げるほうが主のように感じられる。これはかなり効果がある。特に「強め」にすると、見えなかった暗部がずいぶん見えてくる。ただし、軽い感じになることもあるので、シーンを選んで使いたい。

アクティブD-ライティングを変えて噴水を撮影した
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 45mm(FX) / マニュアル(F11、1/250秒) / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

撮影した画像のヒストグラムを比較。「弱め」→「標準」→「強め」の順に、暗い側の山が低くなり、明るくなっているのがわかる。マニュアル露出での「オート」は「標準」と同じ効果になる

木陰でアクティブD-ライティング(ADL)を変更して撮影
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 24mm(FX) / マニュアル(F8、1/80秒) / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

ADL: しない

ADL: 弱め

ADL: 標準

ADL: 強め

ADL: オート

まだ見えないニコンの絵づくり

絵づくり全体だが、基本的にD3やD300路線を踏襲しているようだ。基本的に彩度、コントラストが高めで、インパクトの強い絵になる。露出が適正ならば、描写もすばらしくいい。細部のディテールまで再現する。

ただ、気になるところもある。まずは白飛びが早めに起る、もしくは白っぽくなる傾向にあること。全体に暗めでコントラストが低いシーンならものすごくきれいに描写するのだが、全体に明るいとかコントラストが高いシーンでは、なんとなく白っぽくなってしまう。もちろん露出補正で多少は補えるのだが、今度は暗い部分が見えなくなっていく。もうひとつ気になるのは緑色が軽いこと。彩度の高さとあいまって、緑が浮きぎみになる傾向があるようだ。セッティングを詰めれば改善されるのかもしれないが、今回はそこまで調整する時間がなかった。

正直なところ、D3/D300以降、ニコンの絵がどこに行こうとしているのか、個人的にはまだ見えていない。他メーカーのものは、キヤノンをはじめ、ソニーもオリンパスも、どういう絵をもってきれいと考え、そこに向けてどの程度絵づくりしているのか、だいたいはわかる。好き嫌いやレベルはあるにせよ(例えば、初心者向けのわかりやすい絵づくりなど)、どれも理解はできる。

以前のニコンの絵は好きだった。ゆるい中にも芯があり、濁っていると言われながらも張りつかせない、汎用性の高い絵だった。D200など、セッティングを少し詰めれば、ものすごく自然できれいな絵を見せてくれた。D700はそこからずいぶん遠いところへ来てしまった。私の認識不足、勉強不足であればいいと思うのだが。

彩度の高い被写体を撮影し、○の部分のヒストグラムを比較したのが右のグラフ
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 66mm(FX) / マニュアル(F9、1/60秒) / ISO 200 / WB:マニュアル

ピクチャーコントロールのビビッドはもちろん、スタンダードでも主たる色が張りついている。どのモードでも色の傾向は似ているが、特に彩度が大きく変化するようだ

マクベスのチャートを明るさを変えて撮影し、各色の明度の変化をまとめた。中がADL「しない」、右がADL「弱め」
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 55mm(FX) / マニュアル(F5.6) / ISO 200 / WB:マニュアル / PC:スタンダード

上記に同じ。左からADL「標準」、ADL「強め」、ADL「オート」

ホワイトバランスの微調整は、「オート」「晴天」など、モードごとに調整可能。右はホワイトバランスの変化
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 52mm(FX) / プログラムAE(F10、1/400秒) / ISO 200 / PC:スタンダード