機械としての出来はさすがのニコン・クオリティ

D700はD3に比べれば軽量・コンパクトだとはいえ、やはり重い。手に取るとずしりとくる。D300の825gよりもひとまわり重い。使いこなすなら、それなりに筋肉を付けておきたいもの。マグネシウム製のボディは非常にしっかりしている。金属の感触もいい。グリップは大きめだが、吸いつくようにホールドでき、滑らない。このあたり、ニコンの上位モデルに期待外れはない。

レリーズのフィーリングはすばらしくいい。機械が正しく動いている感じが伝わってくる。連写も気持ちいい。スタッフの女性は、耳の横で連写させて楽しんでいた。軽めのシャッターボタンで、半押しと全押しの差が少ないタイプ。いかにもプロ用のフィーリングだ。ただしシャッター音は大きめで、すーっと押していくと、いきなりガシャンと来る。音が大きいのはミラーユニットが大きいためかもしれないが、D3はもっと静かだったように思う。それでもボディに伝わるショックは少ない。

ボタンのタッチは全体に柔らかく、適度に押し込むことで機能する。実戦での誤操作も少ないはずで、フィーリングもいい。ただ、十字キー(マルチセレクター)の使い心地はイマイチだった。ストロークが深すぎ、奥まで押さないと反応しない。斜めと上下左右のメリハリもない。フォーカスポイントを移動させるときにも、つい蛇行してしまう。

ホールド性は高い。ただし、やはり手の大きめな男性のほうがしっくりきそう

シャッターボタンは軽く、プロ好みのフィーリング

露出補正はボタンを押しながら回す。ダイヤルだけで補正できるよう変更可能

メニューの操作。ボタンはいいが、マルチセレクターのメリハリが少なく慣れが必要

背面の主な操作系

上面の主な操作系

「Info」ボタンが独立するなど細部を変更

ボタン類の配置はD300と基本的に同じ。ただ、メモリーカードカバーの開け方がD80などと同じように直接カバーを開閉する方式になり、開閉ノブを省略。その場所に「Info」ボタンが置かれた。「Info」は主にモニター表示の切り換えを行なう。D300では「Info」ボタンは「プロテクト」ボタンと兼用だったが、D700ではこれが独立したことになる。それだけ情報表示を重視しているのだろう。本当は、「Info」ボタンを押さなくても常時表示できるようにしてほしいところだが。また、情報表示画面から各種設定が可能になった。とても便利だ。これについては次ページで触れよう。

また、マルチセレクターの中央にはD3と同じように「マルチセレクターの中央」ボタンが置かれた。D300ではボタンではなく、"マルチセレクターの中央を押す"という操作でほぼ同じことになるのだが、やはり"中央を押す"よりも独立したボタンのほうが操作しやすい。

ボタンは基本的に目的指向というか、単機能に近い。マルチセレクターの中央ボタンなどの例外はあるが、基本的に撮影や再生などの状態に関わらず、本来の目的を行なう。たとえば再生時でも「Info」ボタンを押すと、撮影情報の表示を行なう。これはこれでわかりやすくていいと思う。

モニターを使った情報表示。「Info」ボタンを押さないと表示されない

通常のメニュー。情報表示画面から設定できるので、このメニューを開く回数も減るはず

カスタムメニュー。細かな設定はほとんどここに置かれている

ファンクションボタンやプレビューボタンは機能が変更できる

マルチセレクターの中央ボタンは「拡大画面との切り換え」が便利

外部のフラッシュをワイヤレスで制御できる。そのコマンダーモードの設定

「マルチセレクターの中央」ボタンで画像拡大が便利

画像拡大は拡大ボタンの連打となる。この場合、拡大は常に画像中央からで、ピント位置は考慮されない。しかし動作はスムースでストレスはない。拡大した状態での横や縦方向へのスクロールも高速だ。また、拡大表示時に「OK」ボタンを押すと元の全体表示に戻る。取扱説明書には書かれていないが、とても便利だ。

しかし、拡大については「マルチセレクターの中央」ボタンを使うのがいい。標準では「1コマとサムネイルの切り換え」が割り当てられているが、カスタムメニュー「f2」の「中央ボタンの機能」で、「拡大画面との切り換え」に切り換えておく。するとボタンひとつで合焦位置を中心に一気に拡大できるのだ。

しかし不思議なのは、通常の拡大ボタンでこれらを可能にしないこと。それこそカスタムメニューに「順に拡大」←→「一気に拡大」とか、「中央から拡大」←→「合焦位置から拡大」といった選択を用意するだけでいいのではないか。そうすればわざわざ別のボタンで拡大しなくてすむ。ちなみに合焦位置からの拡大が可能なのは位相差式のオートフォーカスを使った場合だけで、ライブビューのコントラスト検出(三脚撮影)では反映されない。これも不思議である。

再生状態では、十字キーの左右で前後のコマ、上下で表示形式が変わるのはいつものニコン方式。しかし標準ではずいぶんパターンが少ない。これは「再生」メニューの「再生画面設定」でパターンが選択できるため。例えば「フォーカスポイント」にチェックを入れると、合焦位置を表示してくれる。

標準的な再生画面。モニターは大きいだけでなく、明るいところでも見やすい

ヒストグラムや撮影情報を同時に表示する統合画面

拡大表示。最大で27倍まで拡大できる(画像サイズLの場合)

フォーカスポイントやハイライトの表示は「再生画面設定」でチェックを入れる

撮影情報の表示画面。たくさんの画面に分かれている

再生画面でフォーカスポイントを表示。どこに合ったかがわかる

自動感度はもっと自由に

D700の特長のひとつは撮像感度の広さ。かなりの高感度までノイズを気にせず使用できる。そうなると撮像感度はオートにしてカメラにまかせ、絞りやシャッター速度に専念したくなる。しかしこの感度オートがどうもフィットしなかった。

まず感度オートにするには、「ISO感度設定」メニューの「感度自動制御」をオンにする。しかし、この状態でも「ISO」ボタン+ダイヤルで感度が指定できてしまう。そして指定した感度ではダメそうになると、自動で感度が変化するのだが、すると表示パネルの「ISO AUTO」が点滅を始め、ちょっと不安な気分になってしまう。

このあたりのプログラムは少々複雑。まず「感度自動制御」であっても、指定したISO感度を守ろうとする。そこで設定した「低速限界設定」よりシャッターが長くなりそうになると感度が上がる。この時点で「ISO AUTO」が点滅。さらに撮像感度が「制御上限感度」に届くと、シャッター速度は「低速限界設定」より遅くなる、という流れになる。

結局のところ考え方の問題だろう。D700はたとえ自動感度であっても、とりあえずどこかの感度を指定してくれと求めてくるわけだ。確かにフィルムに慣れた人ならそれも理解しやすいかもしれない。しかしノイズや画質劣化がないのなら、感度はどうでもいいのではないか。インジケーターの点滅は警告を意味すると考えるのが当然だが、これは警告ではない。むしろ「低速限界設定」より遅くなった時点で点滅させるべきだろう。もちろんその場合の表示は「ISO AUTO」ではないはずだが。

撮像感度を自動にするには、「感度自動制御」をONにする

感度自動にするとモニターの表示が「ISO-AUTO」になるが、感度が変わるとこれが点滅

自動でも感度が変わると、赤い文字で記録される

撮影後にカメラ内で暗部・明部の補正を行なう「D-ライティング」

撮影後に画像をモノクロにも変換できる。これはセピア

電池残量は、モニターでは5段階だが、メニューを開くと%表示で見られる