昨年、キヤノンから35mm判フルサイズCMOSセンサーを搭載したプロ向けのデジタル一眼レフ「EOS-1Ds Mark III」が発売された。筆者は「EOS-1D Mark III」を常用しているが、さらなる画素数が必要になり、EOS-1Ds Mark IIIを購入することになった。そこでEOS-1Dユーザーから見たEOS-1Dsをレポートしたいと思う。
まずは1Dsと1Dの違いをチェック
キヤノンはプロ向けデジタル一眼レフとして、1010万画素のEOS-1D Mark III(以下、1D)と、35mmフルサイズ+2110万画素のEOS-1Ds Mark III(以下、1Ds)の2機種を発売しているのはご存じのとおり。EOS-1Dシリーズは画素数は多くないが、スポーツ撮影などの高速連写向けに10コマ/秒の連写性能を持つ。対して1Dsは、連写はそれほどでもないが、写真を大きく引き伸ばすスタジオ撮影などの用途を想定し、デジタル一眼レフ最多の2110万画素を誇っている。しかし、センサーサイズと画素数、連写性能以外の仕様は共通で、ともに「DIGIC III」を2基搭載し、14ビットの信号処理や、高感度ノイズ低減処理などの機能をもつ。外観も非常に似ており、ペンタ部の形状が若干違うほかには、製品名ロゴ以外ではほとんど区別できない。
共にボディは縦位置シャッターも備えた大型ボディ。基本的な仕様は一足早く「Mark III」になった1Dに準じている。1Dsは画素数が増えたぶん、連写性能は5コマ/秒になった。撮像感度は、1Dは常用で最大ISO 3200、増感でISO 6400が可能なのに対し、1Dsは常用ISO 1600、増感ISO 3200と、一段下がったことになる。大きさは1Dsのほうが3mm高く、重量も55g重くなっている。
EOS-1Dシリーズを使い続けた理由
筆者は、仕事カメラとしてEOS-1Dシリーズをずっと使ってきた。とりわけスポーツ撮影が多いというわけではないが、理由はフルサイズの撮像素子とした場合、画像の周辺画質がどうなるか、いまひとつ信用できなかったためだ。
EOS-1DシリーズはAPS-Hサイズのセンサーを使用している。これは1Dsの35mmフルサイズよりは小さいが、一般的なデジタル一眼レフで利用されているAPS-Cサイズよりは一回り大きい。1Ds(Mark III)では28.1×18.7mmであり、画角はレンズ表記の1.3倍換算となる。
このサイズであれば、画質が劣化しやすいレンズの周辺部分を使わずにすむ。中心部分のおいしい部分だけを使用できるわけだ。周辺の光量落ちだけなら絞り込むことである程度は改善できるが、像の流れや各収差など、レンズの周辺はいろいろ起こりやすい。また、最新のデジタルを考慮したレンズばかりならいいのかもしれないが、長くキヤノンを使っているため、フィルム時代のレンズも使っているのが実状だ。これらとの相性も心配ではある。
と、愚痴ばかりを言っているわけにもいかない。写真を大きく引き伸ばして使用する、つまり画素数の必要な仕事が増えてきて、ついに1Dsの購入に踏み切ることになった。次ページからは1Dとの比較を試してみる。