シャガール展を見終わったといって、そのままポーラ美術館を去るのはもったいない。地下2階の常設展示に、ぜひ足を運んでみていただきたい。会期中、「ポーラ美術館の絵画」展が同時開催されている。タイトル通り、数ある収蔵品の中から選りすぐりの作品が一堂に展示されて、入場者を圧倒する。シャガールに十分満足した後でさえ、まだ見たくなるほどの充実した内容だ。
展示は、4つのゾーンに分かれている。「西洋絵画 ─ ルネ、ルノワールからフジタ、ピカソまで」、「日本の洋画I 明治の洋画 ─ 高橋由一、浅井忠から黒田清輝、藤島武二まで」、「日本の洋画II ─ 大正・昭和の洋画 ─ 岸田劉生から梅原龍三郎、安井曾太郎まで」、そして「日本画 ─ 高山辰雄、杉山寧、平山郁夫 ─ 現代日本画の巨匠たち」。タイトルに現れた画家以外にも驚くような名作に出合える。モネ「睡蓮の池」やルノワール「髪かざり」、有名な「麗子坐像」もあり、その作品の豊富さと質の高さに驚かされる。
ゆっくりシャガール展を味わっていたこともあり、常設展示を駆け足で見ているうちに17時の閉館時間がやってきた。おかげで、もうひとつの常設展示「浮世絵美人と化粧道具 ─ 江戸から明治」展は、様子を覗くだけになってしまった。数ある浮世絵コレクションの中から、化粧風俗を描いた作品を集め、当時の化粧道具とともに展示したポーラ美術館ならではの企画だ。実はシャガール展は、半年間の会期中前期後期で展示が一部入れ替わる。それに併せて、もう一度、今度はゆっくりと時間をとって、常設展示に再会しに来ようと会場を後にした。
国立公園内の豊かな緑の中に建つポーラ美術館は、ほとんどの部分を地下に収めることで、森と共生する美しい風景を描きだしている。館内に入ると、ガラスを多用して陽光を取り込んだ明るい空間、最新の光ファイバーを駆使した照明など、自然光にやわらかく包まれて心地よく作品を鑑賞できる。箱根の自然、緑と共生した光あふれる建築、そしてすばらしい芸術作品、すべてを一体化して楽しめる日本では稀有な美術館だ。これからの行楽シーズン、箱根でアート三昧の一日は、いかがだろう。
展覧会名 | 『シャガール 私の物語』Chagall:My Stories |
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会期 | 2008年3月29日(土)~9月7日(日) |
会場 | ポーラ美術館(箱根・仙石原) |
開館時間 | 9:00~17:00(入館は16:30まで) |
休館日 | 会期中無休 |
主催 | 財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館 |
入館料 | 大人=1,800円(1,500円) シニア割引(65歳以上)=1,600円(1,500円) / 大学・高校生=1,300円(1,100円) / 小・中・高生=700円(500円) |
※( )内は15名以上の団体料金
シャガールの色彩世界を舌で味わう
ポーラ美術館1階のレストラン「アレイ」には、シャガール展会期中オリジナル・コースメニュー「シャガール 色彩の饗宴 / Chagall: the Ring of Color」が用意されている。シャガールがカンヴァスに色彩を散りばめたように、真っ白な皿をカンヴァスに見立て、色とりどりの食材やソースで料理に花を添えた。シャガール展で色彩の世界を堪能した後は、窓外に広がる緑を眺めながら、シャガールの色彩世界を舌で味わってはいかがだろう。
メニュー名 | シャガール 色彩の饗宴 / Chagall: the Ring of Color |
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オードブル | 小海老のトマトマリネ 南仏の思い出に生ハムを添えて |
メインディッシュ | 鴨のコンフィ 季節の彩り野菜と赤かぶのクーリと共に |
デザート | シャガールからの甘いプレゼント クリームチーズのムースにバニラアイスを添えて ※コーヒー・紅茶、またはハーブティー |
価格 | 2,625円 |