ツアーは朝の6時30分、函館駅集合。前日に遅くまで仕事があっため、5時間くらいしか寝ておらず、眠い。駅ロビーはすでに申し込みを済ませ支給されたヘルメットを手にしている参加者であふれている。この日の参加者は129名。5つの班に分かれて行動する。待機している参加者の中に大きな救急箱を手にした看護師がいるのを目にして、このツアーのただ事ではなさを実感した。
とりあえず駅の売店で朝食のお弁当を買い、7時初のスーパー白鳥に乗り込む。急いでお弁当を食べ、車内販売でコーヒーを買う。7時46分頃、列車は青函トンネルに突入。トンネル内では列車のガラスの外側にたくさんの水滴がつき、湿気の高さをうかがわせる。車内では参加者が早くもヘルメットを装着。黄色いヘルメットが並ぶ客車内はちょっと異様な光景だ。8時過ぎ、列車は竜飛海底駅に停車。降りる時間である。
降り立った竜飛海底駅でまずは人数確認。「たっぴかいてい」の表示板を見て、本当に海底にやって来たんだとあらためて思う。竜飛海底駅にはなぜか東海道五十三次の絵が描かれていたり、謎の数字が彫られていたりする。
しばらく駅構内を進むと、「定点 海面下140米」と書かれた地点に出た。「海底駅は定点と言って、避難所のために設けられたものです」との説明がある。竜飛海底駅を見回すが、工事に関する写真パネルが展示されているくらいで特に何もない場所である。そもそも避難所なのだから仕方がないと納得。続いて、青函トンネルの全体図を前にしてこの日の行程についての説明がJR職員からなされる。
この日歩くのは、列車の走っている本坑ではなく作業坑と先進導坑。竜飛海底駅からしばらくは作業坑を行く。作業坑は本坑から30m離れた場所に平行して掘られたトンネルだ。常に本坑より先回りして掘られた。現在は保守点検のための通路として使われており、JR職員が自動車や自転車で移動している。しばらく行くと作業坑から先進導坑に入る。先進導坑は最も先行して掘られたトンネルで、地質の調査などの目的を果たした。現在は換気と排水のために使われている。先進導坑を進んで最深部に到達した後、2,102段の階段を一気に上って吉岡斜坑から地上に出る。うーむ、ここに来てようやくこの旅のハードさを理解した。だが、何度か電車で通過したことのある青函トンネルを自分の足で「歩く」というのはやはり貴重な体験だ。やる気満々で23.3kmの旅に出発だ。