賢い敵と頼れる味方。芽生えちゃうNPCの友情と信頼感
多くのFPSゲームはプレイヤーが唯一のヒーローという扱いで、どういうワケか、圧倒的敵勢力下に単独で乗り込むというシチュエーションが多い。そのため、敵の数が多いのだが、「多勢に無勢」なシチュエーションではゲームにならないので、敵をちょっとアホたれなノー○リン気味にしてバランスをとるのがセオリーとなっている。こちらへの攻撃は、どこに撃ってるんだか分かんないようなヘタレな射撃が基本で、流れ弾が時々こちらに当たるかどうかっていうような感覚の勝負。この相手の手抜きな仕掛けに気がついちゃうと、なんか真剣勝負をしているという感覚がなくなっちゃって、コンピュータに自分が接待されているような気分になってきてしらけてしまう。
COD4の場合、敵は賢いし、敵の攻撃は本気も本気。ノホホンと立ち歩きで移動していると、シュパパンとあっという間に狙い撃ちされる。こちらが攻撃すればさっと身を隠して移動しちゃうし、あぶり出そうと思って手榴弾を投げると、あろうことか、それを拾って投げ返しても来る!! 時々、誰かが中に入っているんじゃないかと思うほどインテリジェンスなのだ。しかもそんな賢い敵が大勢、有機的に、かつ組織的に攻めてくるんだから緊張するする。
こうなると、とてもロンリーヒーローのプレイヤー1人では太刀打ちできない。そういうわけでこちらも強い賢い味方と共に行動して、頭のいい敵達に軍勢で立ち向かうことになる。COD4では、プレイヤーは、ある部隊に所属する新兵John "Soap" MacTavish"として活躍することになるのだが、この部隊にはPrice大尉というひげ面オヤジな怖い小隊長がいて、基本的には彼の指揮に従って行動すればよいゲームシステムになっている。
ところで、SF系FPSゲームと違って、ミリタリー系FPSゲームは軍事マニアの人たち向けに作られてきた傾向があったので、ちょっと取っつきにくいところが多かったように思う。例えばこういうミリタリー系の部隊ものだと、プレイヤーが指揮官になって、部下にアッチいけとか、こう攻めろとか、援護射撃せよ、みたいなコマンドを発行して部隊を率いて行く……みたいなタイプが多かった。 カジュアルに楽しみたいFPSゲームファンとしては、こういうのは面倒で取っつきにくい。しかし、COD4では優秀な指揮官があれこれと命令してくれるので気分が楽なのだ。「アイツを狙撃しろ」「戦車に爆薬を仕掛けてこい」などなど、なにをすべきかを的確に指示してくれるので、広大な戦場で迷うことがあまりない。
例えば、戦場のまっただ中、「敵の対空機関砲を破壊してこい。このままでは埒があかん」と大尉から命令されるので、プレイヤーは激しい戦火をかいくぐってその破壊の任をこなす必要がある。これを無視していてもゲームオーバーにはならないが、部隊がどんどんピンチに陥ってくるので、プレイヤーはその役割を果たすために自ずと一生懸命になる。適度な行動方針を指し示しつつ、自由度も同時に与えているシステムはうまい。
成功すれば、なんというか、部隊のピンチを救った英雄っぽい自己満足に浸れて、この部分はちょっとだけロンリーヒーローな気分も味わえる。与えられたお遣いをこなして見返りをもらう……のとはひと味違った充足感が得られちゃうのだ。
そして、自分と同じ立場の仲間の歩兵達も敵に優るとも劣らず優秀な連中ばっかりで頼もしい。自分や仲間の身を守ろうとして必死になっている想いが、コンピュータ制御のNPC(Non Player Character)のくせに伝わってきやがる。こちらが、独断専行気味に敵の懐に飛び込んでも、頼みもしないのに何人か味方が勝手に付いてくるし、こちらが気がついていない敵の存在を察すれば、"バババ"と素早く援護射撃なんかもしてくれる。「こいつ、こんなオレに付いてきてくれるのか……」みたいな気分にもなる。それで、その仲間が死んだりすると、NPCなのにちょっと悲しい気分にもなるくらい。
大局的に見れば、敷かれたレールの上をただ走っているだけのテーマパークの一方通行ライド系お化け屋敷的なFPSゲームなのかもしれないが、プレイしている本人にとってはドラマチックなシチュエーションの連続という感覚。小隊長の大尉、NPC同僚兵達……どいつもこいつも薄汚れたオッサン達なのだが、プレイ中、なんだか熱い友情を感じてしまいそうになるのだ。