AGURU IMAGESはこれ以外に、テクスチャデータの高品位取得システム「AGURU SCOPE」も開発。これは5~7万ドル(約600万~840万円)でのシステム自体の販売を予定しているようだ。

「AGURU SCOPE」

AGURU SCOPEは比較的サイズの小さい物体の表面の材質をテクスチャデータやBRDF/BTFとして取得するシステム。

内壁を鏡とした板で三角柱を形成して万華鏡のようにしているのが特徴。万華鏡の最下段に測定対象のオブジェクトを置き、万華鏡をデジカメで撮影するというような構造になっている。

デジタルカメラ自体は普通のデジタル一眼レフカメラ

撮影した写真はPCで処理されてBRDF/BTFのデータに変換生成される

BRDFやBTFを求めるには、様々な方向から光を照射しその結果を様々な方向から撮影しなければならないが、これを実際に本当に様々な方向からライティングをして撮影を行うとなると、前述のAGURU DOMEのように、とてつもなく規模がでかいシステムになってしまう。

そこでAGURU IMAGESでは、対象物が小さいときは何かうまい方法があるはずだと思慮を巡らし、行き着いたのが、この万華鏡型システムというわけだ。

ライティングに用いる光源は通常の液晶/DLPプロジェクタ1台のみ。このプロジェクタで投射画面の一部を光らせた(実際には画面の適当な三角形領域を光らせていく)映像を万華鏡に照射する。

すると、実際には万華鏡の上からしか映像(光)を照射していないのに、内壁の鏡で反射して万華鏡の外から光を照射したようにライティングが行えてしまう。さらにこの光景の撮影も、万華鏡の上から行っているだけなのに、内壁の鏡に反射した様々なアングルの光景の撮影が行えてしまう。

つまり、「AGURU SCOPE」は、万華鏡の鏡の特性をうまく使うことで、仮想光源を作り出し、様々なアングルからの撮影を効率よく行えてしまうシステムというわけだ。

青と白のスポンジチップが圧着してできたスポンジシートをAGURU SCOPEにセットしている様子

本来は、映像は直上に設置されたデジタル一眼レフカメラで撮影されるのだが、あえてこの方向から筆者のコンパクトデジカメで撮影させてもらった。このように万華鏡効果で様々な角度からの写真が得られていることがわかる

この仕組みにより22角度×22角度の484角度からのライティングが行えるとのことで、比較的コンパクトなシステムながら高品位なBRDF/BTFが得られるのだという。

ただ、万華鏡システムという物理的大きさの制約から、あまり大きな面積のものは取得できず、得られるテクスチャ解像度も256×256テクセル程度だとのこと。これでも、リアルタイム、オフライン、ともに3Dグラフィックスに用いる素材再現には十分な精度だという。

今やPCはもちろん、ゲーム機までもがプログラマブルシェーダアーキテクチャベースのグラフィックスプロセッサを採用してきており、3Dゲームグラフィックスに対し、画像テクスチャのリアリティ以外に、材質表現のリアリティまでもが求められてきている。こうした流れを考えると、AGURU IMAGESの行っているような、高品位な素材や材質データを取得したり提供したりするビジネスは、今後ますます注目度が高くなっていくのかもしれない。