一般展示セクションにブースを構えながらも、ブース内は撮影が一切禁止という状態であったため、写真はブース外からのみになってしまっている点はご容赦いただきたい。

ブース内ではこのCell+RSX-1Uシステムを用いてのデモンストレーションを公開。映像表示はソニー製の4K2K解像度の最新SXRDパネル採用プロジェクタ「SRX-S110」を用いており、なかなかの力の入りよう。

まず公開されたのは、SD解像度のMPEG-2ストリームを1000本同時にデコードして表示し、これをパーティクルライクに3Dグラフィックスとして表示するリアルタイムデモ。CellプロセッサのSPEパワーとRSXの3Dグラフィックス性能を効果的に活用したという技術デモだ。テクスチャアニメーションは現在のゲームグラフィックスでもありふれたテクニックだが、1000本のMPEG-2ストリームを3Dグラフィックス向けテクスチャとして取り扱う様は確かに強いインパクトがある。

1000ストリームのSD解像度のMPEG-2動画をテクスチャのように扱って3Dグラフィックスアニメーションを行うデモ

HAVOKの物理シミュレーションエンジンをCell+RSX-1Uシステムに実装したデモも公開。こちらはシーンに配置された1000個に及ぶ動的に破壊可能なオブジェクトを次々に破壊していくというものであった。こちらはマルチスレッド実装した大局的な物理シミュレーションを、Cellプロセッサの複数のSPEで処理させる、という狙いのデモになる。

香港大学のNelson Chu氏の、格子ボルツマン法の流体物理シミュレーションを活用したインクの再現「SUMINAGASHI」も合わせて公開された。

CellプロセッサのSPEは、もともとこうしたデータ並列処理を得意とするが、ゲーム機のPS3ではメモリが小さかったために、大規模な物理シミュレーションを一挙に走らせるには容量的な制約があった。Cell+RSX-1Uシステムならば最大増設時で10GB近いデータセットが扱えるために、取り扱えるテーマの幅も拡大されることだろう。

また、4K2Kという、今回のデモの投射環境を効果的に活用した技術デモも用意。4K2Kは4096×2160ドットという、現行ハイビジョンの約4倍の画素数の映像で、おもに業務用デジタルシネマ向けの規格として利用されている。

最初は、1基のCell+RSX-1Uシステムを活用しての4K2K映像ストリームに対しリアルタイムに色補正を行うデモを披露。続いて3基のCell+RSX-1Uシステムを同時活用し、24fpsのベースバンドの非圧縮4K2K映像をリアルタイムにエンコードするデモも行われた。4K2Kのデジタルシネマのコーデックは4:4:4のJPEG2000が採用されているが、これを24基のSPUを駆使してリアルタイムに実行し、約250Mbpsのスループットをコンスタントに維持できることをアピールした。3基のCell+RSX-1Uシステムはギガビットイーサネットワークで結ばれ、出力映像は4基のHD SDIを通じてSXRDプロジェクタのSRX-S110へと出力される。

これでもプロセッサパワーは余っているということで、さらに同時にQVGA程度のMPEG-4 AVCへのエンコードも同時に行い、これを無線LAN経由で配信する処理も同時実行。ちゃんとPSPで受信してリアルタイム動画表示が行える様を来場者に確認させていた。

Cell+RSX-1Uシステムは平均的なワークステーションよりもグラフィックス性能に長けていることから、Cellプロセッサパワーだけでなく、CellとRSXの両方を効果的に活用したデモが目立っていたように思う。

このCell+RSX-1Uシステムは短期的な市販予定はないとしながらも、今回の一連の実験プロジェクトから手応えは得ているようで、プロフェッショナル市場への展開は検討されている模様だ。

ブース外からの撮影は許可された。写真はブースとデモの様子