HOLOGRAFIKAブース~標示物の側面までが見える裸眼立体視システム
ハンガリーに本拠を構えるHOLOGRAFIKAはブースにて裸眼立体視ディスプレイ「HOLOVIZIO」を展示していた。
このHOLOVIZIOが普通の裸眼立体視と違うのは、表示物を異なる視点から見るとちゃんと異なる視界が得られる立体視だと言うこと。
例えばディスプレイ正面中央位置に自動車がこちらに相対して表示されていたとする。正面にいる人はこの時点で表示されている車が飛び出て立体的に見える。ここまでは普通の裸眼立体視ディスプレイだ。
ここから見る位置をずらして右側に移動すると、立体的に見えたまま車の側面のフェンダーやドアまでが見えるようになる。
そう、「映像が立体に見える」のではなくて、「立体物が表示されている」という感じの裸眼立体視ディスプレイなのだ。
今回展示されていた製品はいちおう市販モデルと同等のデモ機で画面サイズは72インチの「HOLOVIZIO 640RC」。
表紙領域は1600mm×900mmで、見ての通りアスペクト比は16:9。2D表示解像度は1366×768ドット(約100万画素)で、3D表示解像度は公称約5000万画素となっている。
本体サイズはW2697mm×H2136mm×D2829mm。画面サイズはともかく、このブラウン管どころではない、奥行きがやたら長いところが特徴だ。この特徴については後述する。
色は1677万色の同時発色。視野角は正面を基準にして±50°~70°ということになっている。この範囲で表示物を立体的に観察できると言うことだ。ちなみに視野角外に出ると白飛びして映像が見えなくなる。
この驚きのシステムは、実は、かなり力業な方法で実現されている。図を見て欲しい。
見て分かるように基本的には背面にプロジェクターを配したリアプロTVシステムの構造になっている。
工夫点の1つはスクリーンにあり、通常のリアプロスクリーンではスクリーン面に衝突した光はここで透過しながら拡散反射をして全方位に広がっていく。これがいわば広視野角を実現しているわけだが、このスクリーンでは拡散反射をせず、入射角からの光の指向性を成形維持して透過させる偏光系が配されているのだ。
このスクリーンを利用し、表示物の様々なアングルからの映像を、その視線から見える角度と合う形で投射するように複数のプロジェクタを配置していくのだ。これが工夫点の2つ目だ。
72インチの640RCでは、なんと1366×768ドット解像度のDLPプロジェクタを64基、装置の一番奥側に配置している。奥行きが長いのはこのためだ。通常のリアプロでは一基のプロジェクタを一度背中側の鏡で反射させて投射距離を稼いで奥行きを小さくするが、そのワザが使えないのでここまで奥行きが長くなってしまったというわけだ。
実はもう一つ工夫点があり、それは本体側面側の内面が鏡になっているということ。これは裸眼立体視の視野角を広げるための工夫で、一度、側面内部の鏡に反射させることで角度の大きい斜めからの投射を擬似的に再現しているのだ(模式図参照)。
自社製のOpenGLベースのエンジンを用いることで、表示する3Dグラフィックスはリアルタイムのもので構わない。今回のデモ機ではAMD製CPUとNVIDIA製グラフィックスカードを搭載したPCを複数台用いているとのことであった。
実際に見てみると通常の裸眼立体視よりもボリューム感があり、臨場感も高い。感覚としては表示面から±50cmくらいの範囲に立体感があるという感じであった。基本的にOpenGLベースであればなんでも表示できるとのことなので、3Dゲームなどをプレイしたらかなり楽しそうだ。実際、ブースではDOOM3からコンバートして持ってきたと思われるモンスターキャラクターを表示し、ジェスチャーポーズでインタラクトできるデモを公開していた。なお、64基のプロジェクタで同一タイミングで表示するということは毎コマ64方向の視点から3Dグラフィックスを同時にレンダリングして表示する必要があるわけで、これはかなり高負荷だといえる。今回のブースで行われていたモンスターキャラクタのインタラクトデモは、表示キャラクタが一体と言うことで平均30fpsを維持しているのだとのこと。ちなみに、これだと、システム全体としては毎秒1920フレームレンダリングしている計算だ。
主な用途としては、石油/ガス探査目的のの地質学データの可視化、自動車メーカーのデザインプレビュー、CTスキャン結果などの医療データの可視化、エンターテインメント目的などが想定されているという。
日本での代理店も付いたそうで、日本ではクリスティ・デジタル・システムズ日本支社が販売を担当しているとのことだ。