QUALCOMMブース~蝶の羽の鱗粉からヒントを得た新型反射型ディスプレイ「IMOD」ディプレイとは!?

QUALCOMMが展示していたのは液晶でも有機ELでもプラズマでもない全く新しいディスプレイパネル「IMOD」ディスプレイ。

QUALCOMMブース

IMODとはInterferometric Modulatorの略で、直訳するならば「光干渉変調」ということになる。触れ込みは「INSPIRED BY NATURE:自然からヒントを得た」となっており、なにやらあやしげなのだが、着目点は「蝶や孔雀の羽は自発光でもないのに、なんであんなに鮮やかなのか」というところにある。

蝶や孔雀の羽は、やってきた外光が羽の表面上の薄膜で干渉し、そこで反射光が特定色に変換されて反射されるからあのように鮮やかに見える。この原理を電子的に制御して作り出そうというのがIMODディスプレイの基本的なアイディアだ。

各画素は表示側に薄膜をコーティングした透明な硝子基版を配し、その下に薄いフィルムが取り付けられ、ややギャップを開けて最下段には導電性の反射膜が配された構造。電圧をフィルム側と反射膜にかけると静電効果により反射薄膜が浮き上がりギャップを埋めてしまう。この時、外からの入射光は光の干渉現象で紫外線領域にシフトしてしまい可視光でなくなることから黒表示となる。電圧を戻すと反射薄膜が元に戻り、ギャップができ、外からの入射光は、このギャップを通りこのギャップと最上部の薄膜と反射膜との干渉で光の波長がシフトし、ある想定した単色となって反射されていく。その単色はギャップ幅や薄膜のレシピで変わってくるようだが、それについては資料では明らかになっていない。

カラーフィルタで透過光を選別してしまう方式よりも発色効率は高く、また黒表示も反射光を紫外線にシフトしてしまうのことで可視光を返さないので、黒は印刷された紙の黒に近い黒さになる

ここで気がつくのは、IMODでは、黒か"その単色"の二色しか出せないという点。このままではフルカラーは出せないことになる。そこで二色しか出せない単色サブピクセルを複数用意して、階調を作り出すアプローチをとる。例えば下の図のように14個の赤の単色サブピクセルを用意すれば0~14個の単色赤階調が作り出せることになる。なお、1個あたりのサブピクセルの一辺の長さは10~100ミクロンにできるとし、1ピクセルとして構築した際は液晶とそれほど変わらぬ解像度が実現できるとされている。

サブピクセルは黒か単色かのどちらかに限定されるのでフルカラーを出すには1ピクセルあたりRGBのサブピクセルを複数個用意する必要がある

応答速度は1msで、液晶の10倍以上は高速とされており、動画表示性能も問題ないとしている。

画素の単色表示状態、黒表示状態のいずれの場合も電気的な安定性が高く(双安定性)、その画素表示状態の維持電力が最低限でよいことから、消費電力も液晶より圧倒的に少ない。

屋外の明るいところでもカラーではっきりと見えるのが特徴だが、暗い室内ではどうしても色味が淡くなってしまう弱点はある。基本原理が外光をあてにしているので、暗い場所でよく見えるようにするためにはフロントライト方式で照らすしかなく、そうなるとどうしても光ムラができてしまう。つまり、外光が期待できない夜や暗室で見ようとすると、IMODのカラー表示品質は液晶には若干及ばないといわざるを得ない。

ということから、残念ながら次世代テレビ向けパネルになりそうな手応えはないが、それでも、腕時計や携帯電話のような屋外での活用が重視される機器や、乗り物の運転席やコクピットの計器表示のような、いかなる環境下でも一定レベル以上の視認性が常に確保されるような局面の表示デバイスとしては有望だと思われる。

今後の展開に期待したい。

周囲が明るくても視認性がよいことがウリのIMODディスプレイ。なお、LUBIX社のワイヤレスヘッドフォンのリモコン部にIMODディスプレイが採用されたとのこと