「Full-Scale Saccade-Based Display」/NTTコミュニケーション科学基礎研究所~視線を動かして見られるフルカラー画像の驚き!?
一次元の直線状に並んだLEDアレイに対し、時分割で映像を構成する走査線を表示させ、これを高速に動かし、人間の目の残像効果を利用して映像を見せるLED POV(Persistence of Vision)デバイスがある。振ることで矢印が浮かび上がる誘導用の警告棒や、文字が浮き出る靴や扇風機などを時々見かけるようになってきているが、今回展示された「Full-Scale Saccade-Based Display」(FSSBD)は、静止している棒に対し、視線を動かすようにしむけて映像を見せるシステムだ。
また、従来は単色や限定的だったカラー表現についても、かなり高精度な制御を行うことでフルカラー(に近い多色)表現を実現している点もこのFSSBDの特徴になっている。
LEDアレイは、フルカラー表現のためにRGBの三原色を用意し、これを縦方向に直線上にレイアウトする。この縦棒状のLEDアレイに対し、映像の走査線を時分割で表示してやる、という点はLED POVと同じだ。
ただ、この棒状のLEDアレイは停止しており、それをただ見ただけでは光る棒が置いてあるようにしか見えない。そこで、LEDアレイが置いてある方向とは逆方向から音を出してそちらに注意をし向けたり、複数置いたこのLEDアレイを順番に点灯するなどして、視線の移動を促す仕掛けを併用してやる。これにより被験者は能動的に視線を動かすことになり、その瞬間に一瞬、映像を見ることになる。
首を振るとフルカラー映像が現れる。これまで記号や簡単なアイコンやキャラクタ表示のみだった残像効果映像機器でフルカラー映像が見えるのはなかなか感動的。写真はカメラを左右に振りながらシャッター速度を遅めにして撮影したもの |
ちなみに、展示されていたFSSBDのLEDアレイは高さ1.8m。0.51ms単位で1走査線分の映像を表示しており、この間にRGBの三原色LEDが各5ビット(32階調)で制御され、理論上は32768色の同時発色のカラー映像を浮かび上がらせることができる仕様となっている。LEDアレイは128ピクセル分の表現に対応しており、デモンストレーションでは128×128ピクセルのフレーム表示を64ms単位に行っていた。
広告ディスプレイとしての運用や演劇やコンサートの舞台装置としての応用が期待されているという。確かに演劇やコンサートでは視聴者は演者を目で追うことになるので、その瞬間に映像を見ることになる。
EMERGING TECHNOLOGIESの展示としては、比較的近い将来の実用が見込める技術展示であり、近い将来、一般の目に触れことがあるかもしれない。より詳細な情報は共同研究を行った東京大学の研究室のサイトにも掲載されている。